1-①
月曜日の朝、学校に
まだチャイムは鳴っていないから、生徒が
(先生も、まだ来てないよね? お願いだから、間に合って~)
あたしは後ろのドアを開いて教室を
「
フラフラしながら自分の席に向かい、着席してクタッと机に
「おっはよ~、アリス。今日は遅刻しなかったじゃん」
前の席の
ショートカットで、いつも制服の上にパーカーを着ている彼女は、
「おはよ~、
あたしは片手だけ上げて
いつも
月曜日の朝は特に
チラッと
「目覚まし時計、
夜雨ちゃんにきかれて、あたしはのそっと頭だけを起こした。
「うん……」
「早く買い
「そうなんだけど……」
部屋の机の上に置いている
ずっと使っているから、最近少し時間が
「やっぱり、あのウサギさんに罪はないよ!」
あたしはガバッと体を起こして、
時計の目覚ましは、ちゃんと早めの時間にセットしている。それに、万が一鳴らなかった時のことを考えて、スマホの目覚ましもかけていた。
それでも寝坊してしまうのは、なかなか起きられないあたしの責任だ。
今朝も飛び起きたのは、目覚まし時計が鳴って二十分も
高校生活も二年目だから、このままではいけないとわかっているのに――。
自分を変えるのは簡単にはいかなくて、
小さい頃から、何をするにも人より遅くて、のんびりしていると言われることが多い。空想の世界に
あたしがグズグズしてばかりいるから、イライラして
(でも、夜雨ちゃんはこんなあたしでも、
それに、同じ美術部で、隣のクラスの
(二人がいなかったら、あたしはもうちょっと
そんなことをぼんやりと考えていると、夜雨ちゃんがあたしの頭にポンッと何かを
「これは……っ! 元気いっぱいモーリーモリー牛乳!」
「早く飲んじゃいな。先生来ちゃうよ」
「うんっ、ありがとう!」
あたしはお礼を言って、急いでストローをパックに差す。一気に飲んでしまうと、「ほぉ〜」と幸せな
あたしが朝ご飯を食べ
それに、スポーツも得意で、去年の球技大会や運動会でも
チャイムが鳴り終わる頃、教室の前側のドアが開く。出席
あたしも急いで飲み終えた牛乳パックを折りたたみ、ゴミ
全員が座ったのを
その
「ギリギリ間に合った……はず!」
息を切らして教室に飛び込んできたのは、男子だった。
(わっ、
あたしは急にソワソワドキドキしてくる。
「間に合ってないぞー。三分の遅刻でアウト。白秋~」
先生がニヤッと笑って
「ええ~~っ、うそだろ……全力で走ってきたのに!」
「あはははっ、残念だったなー。
がっかりしてうな垂れているその男子に、クラスの男子たちが笑って声をかける。
白秋晴斗君はあたしの隣の席にやってくると、
「今日は、
机に
あたしは
でもその声は聞こえなかったみたいで、白秋君はすぐに
(今のは心の準備ができていなかったからだよ。本当だよ。次はちゃんと話せるように頑張るから!)
心の中で言い訳をしても、もちろん白秋君には届かない。あたしは自分にがっかりして下を向く。
このクラスで遅刻するのは、いつもあたしか白秋君のどちらかだ。先生も、「青春が間に合っているのは、
白秋君が遅刻しがちになるのは、部活の朝練をギリギリまでやっているからだ。
(朝寝坊してるあたしとは
そっと横顔を見ると、白秋君は横の席の男子と小声で話をしながらちょっとふざけ合っている。その楽しそうな
同じクラスになったばかりの、四月の頃。放課後の教室で、初めて声をかけられた。あたしは職員室に呼ばれていた夜雨ちゃんが戻ってくるのを待ちながら、教室でクロッキー帳に絵を
その時のあたしは夢中で
『君って、絵がうまいんだ』
急に白秋君の声がしたから、
そんなあたしに、白秋君は『絵本作家とか、なれそうだよな』と、笑って言ってくれた。
それはずっと、あたしが心の中で思い
友達にも、家族にもまだ
絵本の下絵を描いていたから?
あたしの絵を見て、うまいと
あたしなんかがなれるはずないよと、自信をなくしそうにもなっていたのに。
白秋君の言葉で、
好きになったのは、そんな単純な理由。
なのに、
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