序章―③
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この部屋の張り
正座しているババ様がすっかりお
いつもなら
「ただいま戻りました、ババ様……」
僕は下を向きつつ、恐る恐る口を開いた。
「三人とも、ご苦労だった。ずいぶんと
僕らの帰宅より先に報告が入っていたのだろう。横並びで正座した僕らは返答に
「それは……桃色お姉ちゃんの
横を向いた夢色が、ポツリと不満そうな
「それだけの大立ち回りをしたのだからもちろんのこと、怨霊は退治できたのだろうね。よもや、取り逃がしたなどという無様な失態をするはずがないと思っているけれど……どうなんだい、甘色」
名前を呼ばれた僕は、「はいっ!」と返事した拍子に舌を
「ごめんなさい、ババ様! 怨霊は……取り逃がしてしまいました……」
僕はガバッと頭を下げる。ババ様が無言になったのがなかなか怖ろしい。
僕の顔を見てから、
「甘色お姉ちゃんだけじゃないよ。うちらもしくじったし……っ!」
夢色はシュンッとして、「ババ様、ごめんなさい」と
「ババ様、甘色ちゃんや夢色ちゃんのせいじゃないわ。私がしっかりしていなかったからですもの。それに、お寺のお堂と松は……」
桃色姉さんがスッと横を向き、「怨霊の仕業です」と
あまりにも堂々とした言い訳に、ババ様の
僕も夢色もヒヤヒヤしながら、顔色をうかがう。といっても、面をつけているから表情は見えない。
いつものように
「……お前たちの言い分はわかった。夢色、お前は最近気が
「はーい、ババ様……」
夢色は不服そうにしながらも返事をする。
「甘色」
「はい……っ!」
僕は
「人に
「申し訳ありません、ババ様……」
一度
気落ちしていた僕は、「ババ様」と顔を上げる。
「次はしくじらぬよう、必ずや討魔士としてのお役目を果たしてみせます」
「それはもうよい」
僕は「えっ!」と、
夢色も桃色姉さんもどういうことなのかと、
「この怨霊の
(僕らの手には負えないと判断されたのか……)
ババ様は「それと……」と、僕らを見回して話を続ける。
「
ババ様にジロッと睨まれた夢色は、「ええ~っ!」と声を上げる。
ただでさえ、朝の五時から稽古をしているのに、それよりも一時間も早く起きなければならないのは中学生の夢色にはなかなか
とはいえ、怨霊を取り
ババ様の言う通り、いささかたるんでいたのかもしれない。ここらで、気持ちを引き
(朝ご飯の
朝ご飯とお弁当を作るのは、学校に行く前の僕の日課だ。
「桃色はここに残るように。お前とは話をしなければならぬようだ。じっくりとな……」
ババ様が
「……心当たりがあるだろう?」
ババ様に
「……いい度胸だ、桃色」
ババ様はスッと立ち上がり、床の間の長刀に手を
「ああ~、そうだ! うち、明日の稽古に備えてもう
マズいとばかりに顔を
「それでは、おやすみなさい。ババ様、桃色姉さん!」
ペコッと頭を下げ、急いで部屋を出て襖を閉めた。
僕は「ひええっ!」と、頭を
「桃色っ! 毎回、あちらこちら
「心外だわ、ババ様。私のせいじゃありませんよ~?」
長刀を構えたババ様と大太刀を構えた桃色姉さんが、
(
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