序章ー②
それは、『
人の
怨霊は同じように、恨みや悲しみを宿して
「これも世のため……悪く思うなよ」
僕は一人
「
屋根瓦を
「ややっ!」
反動でよろめき
これは怨霊を斬るために打ち
唇は動いていないのに、
「……
僕は呟いて、スッと立ち上がる。度々、この山の近辺で
怨霊は僕に
「……っ!」
背後から這うように迫った黒髪が、首に巻きつく。体を引きずられた僕は、
(しまった……っ!)
怨霊は僕を靄の中に少しずつ引き寄せようとする。
踏ん張ろうにも足が宙に浮いているため力が入らず、もがくことしかできない。
『甘色、今度の相手はかなり
ババ様が出がけに話していたのを思い出す。
事前に、この怨霊についての報告は聞いていた。数日前この怨霊と
そうなれば――。
怨霊の顔がすぐ間近に迫り、その口が大きく
刀の柄から手を
僕が眼に刃を
今だと、僕は首に絡みついている髪を刀で切り裂いた。
逃れたところで大きく息を吸い込み、痛む喉に手をやる。
(せめて、あと
「甘色ちゃん、
のんびりした姉の声がして、僕は
「
高く飛び上がった桃色姉さんが、細い体に見合わない大太刀を
その重い一撃で、怨霊の右半身が大きく
「桃色姉さん! ややっ、お堂が――――っ!」
僕はお堂を指さす。
「あら~っ、古いお寺だから、きっと屋根が
姉さんは目を丸くしながら、かろうじて形を
(桃色姉さん……)
姉さんが来てくれなければ僕の身も
姉さんはふんわりした
ただ、あまり細かいことを気にしない、よく言えばおおらかな性格なため、怨霊も怨霊でないものもまとめて叩き切ってしまう。怨霊どころか、生きとし生けるものまとめて木っ端微塵にすると、
「あ~も~っ。桃色お姉ちゃん、待ってよ~っ!」
「これ、桃色お姉ちゃんがやったの……? ババ様、絶対お
「甘色ちゃん、夢色ちゃん、気をつけて。この怨霊、なんだか危なそうよ~?」
姉さんはにこやかに言いながら、大太刀を構える。
「桃色お姉ちゃん……」
「桃色姉さん……」
僕も夢色も、少し遠い目になった。
怨霊は人魂を取り込み、削られた半身はすでにもとのように戻っている。
「うっ……うちの苦手なタイプじゃん」
夢色が扱うのは短刀だから、髪や腕が伸びる怨霊相手では確かに分が悪そうだ。
「僕が正面から行く。夢色は背後を」
桃色姉さんは言わずとも、真っ正面から首を狙いにいくだろう。
僕は
怨霊の髪や腕が、僕らを
背後にまわった夢色が高く飛び、一回転してその首筋を
「うちに見とれてんなっつうの――っ!!」
そう叫んだ夢色は、その顔をガンッと
首に
「かたっ!」と、
僕は「
「甘色ちゃん、夢色ちゃん、危ないわよ~」
桃色姉さんの声にハッとして振り向くと、大太刀が勢いよく回転しながら飛んでくる。
僕と夢色はギョッとして、反射的にそれをかわした。
大太刀は周囲の
「ややっ!」
やはり、怨霊より怖ろしきは、桃色姉さんの大太刀だ。
「桃色お姉ちゃん!! むやみに振り回さないでよ。うちらまで巻き込まれるところだったじゃんっ!」
「外しちゃった? ごめんね~」
桃色姉さんは
「桃色お姉ちゃんと一緒に仕事するの、もうやだ~~っ!」
怨霊は
「
僕は屋根を
刀に宿った
靄の向こうはおそらく怨霊が
そこに逃げ込まれると、いくら
(任務失敗だなんて……
僕はため息を吐いて、刀を
その直後、メリッという不吉な音がした。
僕らは冷や
メリッ、バキッ、ズドンッと音が
お堂の半分を
「どーするの、これ。始末書だけじゃ、許してもらえないよ!! うち、お
夢色が青くなって、無残な姿を
「うーん、これはきっと怨霊のせいね。
「お姉ちゃんの大太刀のせいじゃんっ。そんなことだから、怨霊よりも怖ろしい狐ヶ咲の
そんな会話をしている二人の横で、僕はガクッと地面に
「僕としたことが……
(ババ様にどう報告すれば……っ!)
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