【case.2 狐ヶ咲甘色】
序章ー①
「今夜の月は、雲の
満月のはずなのにその姿は見えず、暗い夜空が広がっていた。
僕はトンッと
街から
耳を
「ここで、少し待たせてもらうとしようか……」
辺りを見回し、スカートに
僕が着ている制服はセーラー服で、着物のような
誰かがやってきたとしても、屋根の上まで見上げはしないだろう。まして、こう
少しくらいならこの狐の面を外してもかまわないだろうかと、少し迷ってから風に当たりたい心境で面の
『我ら一族の
怒った狐の面をつけたババ様がすぐに想像できて、「はいっ、ごめんなさい!」と
(いけない、いけない。大事なお役目の最中に、気を
僕は背筋をピンッと伸ばし、きちんと
ここで落ち合うはずの二人は、まだ来ていない。どうやら、僕が少しばかり早く
待っているあいだ、つい鼻歌が
夕日に染まる公園で、近所の子どもらが夏祭りの
それが楽しそうで、その輪に自分も加わってみたくて、一度だけ、勇気を出して声をかけてみたことがある。
『よければ、僕も仲間に入れてくれないかな?』
おずおずと近寄って
『お化け狐が出た~っ!』
『逃げろ~!』
そう、びっくりしたように――。
「お化け狐……か」
あの頃からすでに狐の面をつけていたから、
それは、今なら仕方のないことだとわかる。けれど、幼い頃の僕はなんだかひどく自分が情けなくて、
自分はなぜ、他の子らと
(もう、昔のことかな……)
お堂を囲むように生えていた竹が、左右に揺れている。強まる風の音と
なじみ深いとも言えるような冷え冷えとした感覚と、
「やや、来たようだね……」
僕は背に負った刀の
辺りを
灯籠の
僕はわずかな気配も
次の
「
大きく一歩前に
けれどその
(思ったより、速い……っ!)
足を踏みしめ、靄の中に消えた腕とその気配を
心臓の音と自分の息づかいを感じながら、僕は
暗がりにボッと
いや、炎ではない。
何度
「……いつまで、かくれんぼをしているつもりかな?」
僕はそう言って、刃に手を
「
刀を軽く
僕は
着地した瞬間、首筋を冷気が
靄に
それも
(あれが正体か……)
手が
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