第132話「援軍」

「お、お姉ちゃん、氷華ちゃん!? どうしてここに!?」


 思わぬ二人の登場に、美咲は驚きながら二人の顔を見つめる。


 随分と、タイミングがいい登場なことだ……。

 十中八九、待機してたな……?


 俺はそんなことを考えながら、鈴嶺さんの顔を見る。


 すると、彼女は清々しいほどの素敵な笑顔でこう言った。


「揉めるのがわかっているのに、放っておけるわけないでしょ?」

「……?」


 鈴嶺さんと俺の会話を知らない美咲は、キョトンッとした表情で首を傾げる。

 彼女からすれば、なんで自分の家で彼氏と親が話すことを知ってるの、という感じだろう。


 まぁ、俺も鈴嶺さんに今日のことを話したわけではないのだけど。

 単純に、俺に情報を渡せば先に動くってことまで読まれていたんだろうな。


 それなら、もっと早く来てくれと思うのだが――酷い揉め方にならない限り、俺が自力で解決するのを待つことにしてたんだろう。

 下手に間に入って仲介しても、それは問題の先送りになったり、俺に対する美咲父の印象が下がる可能性が高かったからな。


「せんせぇい!!」


 心愛は突然、美咲の膝から下りて笹川先生の腰へと抱き着いた。

 大好きな笹川先生が現れたから――という感じだが、美咲はムッとする。


 姉に心愛を取られたのが嫌なのだろう。

 前にもこの表情は見せていたので、心境は想像に難くなかった。


「よしよし、心愛ちゃん。頑張ったね」


 笹川先生は優しく心愛を抱き上げると、丁寧に頭を撫で始めた。


「えへへ……♪」


 心愛はヘニャァッとかわいらしく頬を緩め、スリスリと笹川先生の胸に頬を擦りつける。

 甘えたい放題だ。


 ――というか、今の発言……。


「美空、氷華ちゃん、今は大切な話をしているところだから……」


 おそらく、お父さんも二人が現れた理由はわかっているのだろう。

 ダラダラと汗をかきながら、遠回しに二人へ席を外すように言う。


 それにより、笹川先生は――

「お父さん、心愛ちゃんを泣かせたこと、許さないからね……?」

 ――心愛の頭を撫で続けながら、ニコッと素敵な笑みを浮かべた。


 しかし、額には怒りマークのように血管が浮き上がっており、背後には黒いオーラのようなものが見える。

 やはり先程の発言は、心愛が泣いていたことを知っていたから出た言葉のようだ。


 まぁ、笹川先生と鈴嶺さんが一緒に来たということは、笹川先生は鈴嶺さんの部屋にいたんだろうし、隣の家なんだから当然心愛の泣き声は聞こえてただろうな。

 なんせ、ご近所さんが顔を出して見ていたんだし。


 この後、お父さんが更に気まずいことになったのは、言うまでもない。



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【あとがき】


退院しました!

またぼちぼち更新していきます!

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