第131話「子育て」
「心愛ちゃん……ありがとう」
心愛が仲良しと言ってくれたことが嬉しかったようで、美咲は笑顔でお礼を言う。
そして、心愛を抱っこしようと両手を伸ばしてきた。
一瞬心愛は俺の膝から下りるかどうかを考えるが、美咲の気持ちを汲んだのか、おとなしく抱っこされる。
そのまま美咲の膝へと下ろされると、ドヤ顔で美咲の父親を見つめた。
ちゃんと自分も仲良しだぞ……!
というアピールなのか、単純に美咲にかわいがられているのを自慢したいのか、わからないが――まぁ、ご機嫌なのでいいだろう。
「……その子の懐き具合を見れば、嘘ではないことはわかるよ」
どうやら心愛がキーになってくれたようで、美咲父の口調は穏やかなものへとなる。
少なからず、俺と美咲のことを認め始めてくれているのだろう。
「その歳で幼い子の子育ては大変だろう? 私も、美咲や美咲の姉を育ててきたからわかる」
美咲のお父さんは心愛と美咲にチラッと視線を向けた後、姿勢を正して話してくれた。
しかし――
「どうして話題を選べないのかしら、この口は……?」
――心愛がいるのに、幼い子の子育ては大変という話を持ち出したことが引っかかったようで、再び美咲のお母さんがお父さんの頬を引っ張ってしまう。
心愛はそこまで繊細ではないというか、気にしない子なので、大丈夫なのだが……。
とりあえず、心愛がキャッキャッとまた喜んでいるし、怒る美咲のお母さんはなんか踏み込みづらい雰囲気があるので、こちらから止めることはしないんだけど……。
「確かに、子育てで大変なこともあるとは思います。ですが、この子は賢くて聞き分けがいいですし、かわいいので心を癒してくれますから、実際に苦労したことはそれほどないですよ」
俺は心愛の頭に手を伸ばし、優しく撫でながら話を続けた。
撫でられるのが好きな心愛は気持ちよさそうに目を細め、いつものように俺の手に頭を押し付けてくる。
こんなにもかわいいのだから、多少の苦労など気にならないくらいに癒されるのだ。
「なるほど……」
美咲のお母さんの手から解放されたお父さんは、顎に手を当てて神妙な顔つきで頷く。
俺が嘘を言っていないことも理解し、納得してくれているようだ。
そして、再度口を開く。
「君の学校の成績が悪かったり、友人関係に問題があったりするのも――」
「さすがにそれは、僕自身の問題です」
俺についてちゃんと調べていた美咲のお父さんは、原因を心愛の子育てだと結論付けようとした。
しかしその辺は、俺の要領と性格が悪いから、うまくいっていないだけだ。
多分同じ立場であろうと、美咲なら学校の成績も友人関係も良好だっただろう。
だから、それを心愛のせいにしたくはないし、されたくもない。
と、そんなことを思っていると――
「本人にそんな聞き方したって、『はいそうです』なんて言うわけないでしょ?」
「お父さん、そういうのは察するものだよ?」
――まるで図ったかのように、鈴嶺さんと美空さんが現れたのだった。
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【あとがき】
読んで頂き、ありがとうございます(*´▽`*)
ちょっと仕事が忙しすぎて1~2週間ほど更新頻度落ちますが、
頑張って連載は続けていきますので、
よろしくお願い致します。
これからも是非、楽しんで頂けますと幸いです♪
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