【42・サンサク】
リューリ達イケメン親子の罪作りな場面を見た私としては、もっとドキドキな展開を望んでいたが、そうもいかなかった。つまらん。
「アリア、市街地に行きたいのはわかったけど、買い食いは程々にしてね?!」
「ちょいと、それじゃまるで、私がいつも食い意地が、張ってるみたいじゃないか。心外だねぇ」
「………… そう言いながらも、屋台で焼いてる肉を見ながらヨダレを垂らしてる姿じゃ、説得力ないよ」
「はっ! しょ、しょうがないじゃないか! あんないい香りをしてるんだ。食べないと勿体ないよ!」
「朝ごはん食べたばっかりでしょー!………って、行っちゃった………」
私は匂いに誘われるがまま、屋台の前に座って肉を見た。おぉ、いい感じに焼けてるねぇ。
「……… フェアリアルキャットなのか?」
「おっちゃん、よく分かったねぇ」
「のわぁっ?! しゃ、喋ったあぁ?!」
「なんだい? 私が話すのが、そんなに意外かい?」
「ま、ま、魔物が喋るなんて聞いた事ねぇよっ!?」
「ふん。そこら辺の魔物と私を一緒にするんじゃないよ。って、ほら!せっかくの肉が焦げちまうじゃないか。なに、やってるんだい?」
「誰のせいだっ!」
リューリがやっと来たので、振り返って買ってくれと催促しようとしたら、なんか、疲れたような様子だった。
「あぁー……。す、すみませんっ!アリアがご迷惑おかけして本当にごめんなさいっ!」
「なに、謝ってんだい? ほれ、私はちゃんと並んでたじゃないか」
「並べばいいってもんじゃないって!」
リューリがやっと来たので、買って貰おうとしたが、がっくりと肩を落としていた。あれ? なんか、疲れてる?
まだ、何か言いたそうなリューリは諦めたようにため息で言葉を消すと、おっちゃんに向き直り再び謝った。
「おいおい、そんなに謝んなって。俺はこの目でフェアリアルキャットを見れて、しかも、間近で会話まで出来るなんて、死んだオヤジに自慢してぇくれぇだ!」
快活に笑うおっちゃんに、リューリは意外だったのか驚いたが、次第に笑顔になっていった。
「……なに、笑ってんだい?それより、はよ、肉をおくれ!」
「わわっ、押さないでよっ。だって、アリアの事、自慢したいって聞いたらなんか嬉しくなっちゃって……。騒がせちゃったし、アリアも食べたいみたいだから、7本ください!」
私は我慢が出来なくなってきて、頭でリューリの背を押せば、なんとリューリはおっちゃんの言葉に嬉しかったらしい。
私からすれば、そんな事どうでもいいから、肉! の状態なので、やっと買ってくれた串焼き肉をリューリが持って、店の脇に移動すると食べられたから満足だ。
その後は、リューリが家で待っている家族にプレゼントを渡したいと言うのでアクセサリーを売っている出店を回った。
「そういえば、リカルドはどこ行ったんだい?」
「ん? あぁ、父さんならコカトリスの解体した物を冒険者ギルドに戻って買取に出しに行ったよ。全く、今更聞くなんて酷くない?」
「仕方ないじゃないか。あの肉が私を呼んでいたんだから。そういえば、もう一本残ってたねぇ」
「ダメっ!これは、父さんの分!」
「チッ……」
「……… 舌打ちされた。五本も食べたのにまだ食べるの?」
「まだまだ余裕さね」
そんな話をして、アクセサリーを選び買うと、次はどこ行こうかと話をしながら歩くと鼻を掠めた僅かな香り。
その正体に嬉しさが込上がり、今度は置いていかないようリューリを背に乗せてわたしは走り出した。
「な、なにっ?! ちょっ、説明っ!」
「僅かだけど、しょう油の焦がす匂いがした!」
リューリはそんな私から振り落とされないよう体勢を直すと、起き上がり聞いて来たので、走りながら答えた。
間違いない! あの匂いはしょう油だ!
周りの人間に気をつけながら私はしょう油の匂いを追って街中を走り続けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます