【24・狩りのジカン】
「……さぁて、今日はアイツを狩りに行くよ?」
朝食としてカツとハンバーグをたらふく食べて、エネルギー満タンとばかりに私は森の奥を見据えて牙を出して笑った。
昨日の夕食? 塩コショウのシンプルなステーキをたらふく食べましたよ? 実に美味しかったです。
肉ばっかりだと思うが、仕方ない。 元は生肉を食べていたのを私という自我が転生で生まれたおかげで、焼きに進化した。 私、生肉なんて嫌だもん。
「あーー……。 朝からよく肉ばっかり食べるよ。 そして、やる気満々だし」
「当たり前だろ? アンタは朝から暗いねぇ。 何もアンタはする事はないだよ?」
「そうは言っても気が重いのは重いよ……」
「なに情けない事言ってんだい。 ほら、さっさと乗りな」
リューリは私の言葉に渋々背に乗り、落ちないよう体制を整えたのを感じると、森の奥へと私は走り出した。
「……みーつけたっ」
「うわぁ……。 楽しそうだよ……」
ブラックサーペントの魔力を辿り奥へと迷いなく進むと、魔素の濃い鬱蒼としてジメッとした洞穴を見下ろせる場所へと着いた。
「……魔素の森よりはマシだけど、ここら辺も充分魔素が濃いね」
リューリは私から降りると周りを見渡し、息を潜めるようにそう言っては、私の視線を追って洞穴を見下ろした。
「アンタはここに居るんだよ? 結界は張っておくから大人しくしてな」
「勿論!」
元気よく返事するリューリに呆れるが、私は下にある洞穴に目線を戻して、結界をリューリに張ると洞穴の前に軽やかに降り立った。
「さてさて……出ておいで?」
抑えていた魔力を本来のフェアリアルキャットとして相応しい量まで解放すると、空気が変わった。
私としては、おびき寄せる為に一時的な解放とはいえ、みなぎる力に自然と獰猛な笑みを浮かべ、威嚇するように唸り声を上げた。
「っ!……これがっ、アリアの魔力っ!威圧感が半端ないっ」
ーーズッ、ズズッ
リューリは結界があるとはいえ、その威圧に冷や汗を流していた。そして、私の威圧に当てられたのか奥で素早く動き、敵意むき出しで迫ってきた。
「キシャッーーー!!!」
「おやおや、中々いいサイズだねぇ」
姿を現したブラックサーペントは、よくそんな巨体が洞穴に入って居たなとツッコミたくなるほど巨大で、私を丸飲み出来るほど体格差はあった。
怒りを顕に毒霧を早速吐き出してくるが、私はすかさず風魔法『
「……さて、どうなりたい?」
「ギギッ、シャッー!!」
しかし、ブラックサーペントは未だに諦めず、動く尻尾を振りかざして私を叩き潰そうとした。 それを跳んで躱すとブラックサーペントの頭上に降り立ちトドメと魔法を放った。
「ふん、舐めんじゃないよ。 終わりだ。 氷魔法『死の
ーーピキピキッ! バキバキッ!
ブラックサーペントは逃れようとしたが、氷漬けになる方が早かった。 放った魔法は対象のみならず、ブラックサーペントの推定半径50m辺りを巻き込み、冷気を漂わせ辺りの気温を一気に下げる氷の彫刻となって絶命したのだった。
「…………ふぅ、終わったよ」
私は一連の戦闘とは言い難い一方的な魔法攻撃で終わらせると、リューリの前に飛び降り、再び魔力を制御して結界を解くと唖然としているリューリにそう言った。
「…………い、一方的過ぎる」
「ふん、本当ならデカい雷魔法一発で終わらせても良かったけど、たまには、多少なりとも色々魔法を使いたかったのさ。ただ、あれくらいで終わるなんてつまらないねぇ。 まぁ、なるべく傷も付けたく無かったから仕方ないか」
「最後に使ったのって氷魔法では難易度が最高ランクの一つだったと思うけど……」
「そうだったかい? 馬鹿でかい相手には保存も効くから良く使っていたねぇ」
仕方ないじゃん! フェアリアルキャット知識では、だいたいいつも雷魔法でドカン、炎魔法で丸焦げ、氷魔法のさっきので終わってたんだもん!
「僕の従魔が規格外過ぎる……」
ポツリとリューリの呟きが、冷気を帯びた風に攫われたのだった。
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