【25・魔力コントロールの成果】
「ねぇ、早くそれを仕舞って帰るよ?」
「え……ぁ、う、うん」
遠い目をしていつまで経っても動かないリューリに痺れを切らして、鼻先でグイグイと押してマジックボックスにブラックサーペントの氷の彫刻を片付けさせて、私は後ろでそれを眺めた。
「うわぁ……。 近くで見ると余計デカく見える……。入るかなぁ……」
引きつった表情で怖々と掴みつつ、ブラックサーペントをマジックボックスに仕舞うリューリの姿を見ながらマジックボックスの容量大丈夫かな? と他人事のように私は考える。
「まぁ、無理だったら私が咥えて運べばいいか……。面倒だけど」
「うぅ……。冷たい……。何か言ったー?」
「何でもないさ。……ほら、終わったならさっさと行くよ」
リューリが冷たい思いをしながらマジックボックスに収納を終えると、私に振り向いて聞いてくるが、首を振って話を変えると昨日、野宿し拠点にした場所まで歩き出した。
「はぁー……。やっと、ここまで来たね」
「何言ってんだい。本当ならこのまま帰ってもいいんだよ?」
「……ぅぐっ、あのスピードは嫌」
「だから、ここで休むんじゃないか。それより、ずっと魔力コントロールはしてるんだよねぇ?」
「あぁ、それね……うーん。何となく血の流れをイメージして魔力も巡らしているけど、こんな感じでいいのか不安……」
拠点に着いて昼は軽く済ませたので、夕食はガッツリ食べたいとわがままを言った私に苦笑いをすると、早めの準備をしているリューリの邪魔にならないよう後ろで伏せながら聞くと、なんとも微妙な返事。
ならば、やることは一つ!
「夕食が終わったら、アンタの中で一番強力な魔法を一発、私に当ててみな。それで、わかるさね」
「…………はい?」
「だから、魔力コントロールが出来てれば、倒れない出来て無かったら……わかるね?」
そう、単純だけど分かりやすい。やってみればいいのだ!
「…………アリア、それ本気?」
「当たり前だろう? 小さい魔法で細かなコントロールはその後さ。自分の限界を知る意味もある」
「………………拒否権は?」
「ない」
ぶっちゃけリューリの限界って知らないから丁度いいしね〜!
何やらすっごく嫌そうに言ってくるが、気にしない。 君の為なのだ!
「………一気に気が重くなったんだけど」
「ごちゃごちゃ言ってないで、そうと決まれば、さっさとご飯食べるよ!」
「なんか、めっちゃ楽しそうなんだけどっ!」
そんなこんなで、やって来ました! リューリくんの魔力限界を知ろう! が。
「いいかい? どんな魔法でも構いやしないさ。ただ、いつも通りやればいい。威力が強かったらその分、魔力が上手く体内で巡っているって事さ」
「わ、わかった!………っ、水よ!荒れ狂う激流となりその力を示せ!『水の激流』!」
そう言って杖で私の方を指して、詠唱付きで繰り出されたのは水魔法『水の激流』。 中級の下位ではあるが、威力は期待以上。
激しく水が流れ出し、こちらを押し流そうとする魔法を私は、結界魔法、『魔封殺の陣』で閉じ込めると、素早く走り出し水魔法『水刃』を3枚作りリューリに向けて放った。
「反撃してくるなんて聞いてないよっ!『水壁』っ!」
「敵はそんな事で止まってはくれないよ!」
「くっ!『水鞭』っ!」
荒い呼吸だが、しっかりと反撃に動くリューリに私は楽しくなり更に追撃をしようとするが、『水鞭』は鞭というより水鉄砲のような弱い勢いだったので、結界を自身に張り受け止めた。
「はっ、はっ、はぁっ!」
「ストップ。リューリ、やれば出来るじゃないか」
「はぁっ…はぁっ…も、無理っ……!」
『水壁』も消えて、本人を見れば、荒く呼吸を繰り返し魔力不足になっている。
「魔力コントロール出来てたねぇ」
「……そ、そうなの? いまいち、自分じゃわからないよ。 でも、言われてみれば、『水の激流』を放っても不思議と動けてたような気がする」
「それが、魔力を巡らすって事による魔力コントロールさね」
地面に座りこんだリューリに、そういいながら褒めるように前脚で頭をポンポンしたのだった。
「マジック・ポーション、飲むんだねぇ」
「うぅ……。 身体がすっごくダルい……」
「次は魔力コントロールをして、細かな魔法の威力を変えるよ。 必要な分を必要なだけ使えるようにね。 それが、出来れば、初級で同じ魔法でも使い勝手がかわるのさ」
「えー……。 休ませてー……」
あそこまで動けたのなら上出来だけど、まだまだ魔法は荒いからね。頑張ってリューリくん!
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