【8・イタズラ】

 イメージ的にはノルウェージャンフォレストキャット。 だって、この長毛と毛並みを考えたらこれだ! ってなったのよ。



「…………マヂか」



 視界が低くなり、スキル《変身》が上手く出来た事に内心、安堵しつつもこのお猫様の姿ではあくまで、優雅に、そして威厳を保つようにくるりと足元で回りお座りをする。


 そして、今まで見下ろしていたリューリを見上げれば、彼は目を見開き、呟いた。



「ふぅ………これでいいかい? この姿だとアンタを乗せて走るなんて出来ないから諦めなよ?」



 なんせ、いくら大型飼い猫種とはいえ潰れちゃうからね! 乗せて移動するならライオンサイズにならないと!



「乗りたくないよ!」


「なんだい、遠慮なんてしなくても、アンタだけ特別に乗せてやるさ」


「遠慮してないよ?! どこをどう聞いたらそうなるのさ!」


「あんなに、楽しそうにしてたじゃないか」


「してないし、限度があるでしょっ……」


「リューリ……。 落ち着くんだ」



 まだ言い足りないのか、何かを言おうとしたが、リカルドにどうどうと宥められてしまったリューリ。


 あら、残念。 もう少しからかおうとしたのに……。



「なぁ……俺は夢でも見てんのか?」


「馬鹿いうな……俺だって信じられねぇよ……」


「フェアリアルキャットが坊ちゃんとゼルバさんを連れてきたと思ったら……」


「坊ちゃんの従魔……」


「しかも、小さくなったぜ?」


「「夢じゃねぇよな……?」」


「「本物のフェアリアルキャットだよな……?」」



 聞こえてくる冒険者や領兵達の話に私のイタズラ心が刺激され、そっと闇魔法『闇の霧』で姿を隠し彼らの間に移動した。



「随分、疑り深いねぇ……。 この姿は私のスキルを使った姿だよ」


「「のぁーーっ!!」」


「「ぎゃーーっ!!」」


「「ごめんなさーい!!」」


「うるさっ!」



 各自が盛大に驚き、大声をあげ逃げて行く姿に耳がキーンっとなって思わず、両足で耳を塞ぎ毛を逆立ててしまった。



「ちょっと、何してるのかなー?」



 後ろから抱き上げられビヨーンと伸ばされてしまった。 あら、なんか怒ってる?



「なに、ちょっと遊んだだけさね。それより、リューリよ。 これは辞めておくれ? 恥ずかしいじゃないか」


「恥ずかしい? どうして?」


「おや、私はこれでも女だよ? お腹を見せるって事はむっ…」


「わかったから言わなくていい!」



 私が最後まで言おうとしたら、パッと手を離して降ろしてくれた。


 でもねぇー…。



「ちょいと、もっと丁寧に扱いなよ」



 私は、難なく地面に着地したが、乱れた毛並みを身体を震わせたり足で直すと、リューリへと文句を言うのだった。


 結局、夜も遅いという事で従魔登録とかは後日改めてとなったみたい。 もう帰ろうかって話してた所にあの悲鳴。


 そりゃ、怒るか! でも、面白いのがいけないんだよね!

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