【7・オヤコ】
あー!楽しかった!あの風を切って走るのは爽快だね!お猫様の身体のせいかとっても身軽だし、2人を乗せてても全然気にならなかった!
途中、手頃な猪みたいな魔物と出会ったけど、勿論、魔法でドカン!だったよ!
それにしても………
「情けないねぇ……。そんなんじゃ、魔物に簡単に殺られちまうよ?」
リューリくん、イケショタの顔が残念なぐらいグッタリしてる。おじいちゃんのゼルバさんなんて、終始笑い声あげてて楽しんでたよ?
「うぅ……絶叫系は苦手なんだよ……普通、もっと優しく移動しない?」
「充分、抑えたはずだがねぇ……。あのまま、アンタらの速度に合わせてたら余計、遅くなってアイツらが森に入って来ちまうさ」
顔色の悪いままリューリは辺りの大人達をみて、最後に自身を抱える父親のリカルドを見上げると素直に謝った。
「……心配かけてごめんなさい」
「いや、怪我はないか?」
「気分が悪い以外は何ともないよ……」
「そうか………。 色々と聞きたいが、まずは、おかえり。無事で良かった」
イケメンなのは血筋なの? パパさんも凛々しい感じのイケメンさんです。 眼福だわぁ……。
親子のやり取りを眺めていると、ゼルバさんが集まっていた部隊への説明を終えて私たちの元にやってきた。
「いやー……結構な騒ぎで参った参った」
「当たり前だよ。 昼頃行ったのに中々帰って来ないんだ。 いくら、父さんが居るからとはいえ《魔素の森》は油断出来ないからね」
リカルドさんは呆れたようにゼルバさんに言うと、私を見上げてきた。
「失礼ですが、伝説の魔獣、フェアリアルキャット様で間違いないでしょうか」
「そうだねぇ。私以外のフェアリアルキャットは見てないから間違いないさ。アンタは?」
「申し遅れました。リューリの父親で現ライヘン領の領主をしているリカルドといいます。息子と私の父がこの度はお世話なりました」
あら、律儀な事。自分で言うのもなんだけど、伝説の魔獣であるフェアリアルキャットを前にして臆せず、堂々として、礼まで言うなんて簡単に出来る事じゃない。
「ふん……アンタの息子と従魔契約を結んだんだ。これくらいどうって事ないさね」
「その従魔契約とは本当でしょうか?」
「なんだい?この私が言っているのに疑うのかい?」
「いえ、そういう訳ではありません。ただ、何故息子と従魔契約をしたのか気になりまして」
確かに気になるのも無理はない。
本来、従魔契約とはテイマーが魔物を使役する時、屈服させ従わせる物だ。
それなのに、今回は明らかにリューリと私ではその工程をすっ飛ばし、尚且つ、私から契約をした。
テイマーでも無いたった1人の少年にだ。
「そんなの、アンタらには関係ないねぇ。 この坊やが面白そうだったから私は契約をしたんだ。 私らからすれば、人間の寿命は短い。 その間の暇つぶしぐらいにはなりそうだったからだよ」
「仮に私や父とでは?」
「イヤだね。大人より子供の方が少しでも長く生きるだろ?安心しな。主人になったリューリは私がちゃんと守ってやるさね。その子に何かあったら私は辺りを焼き払ってやるよ」
ジッと私を見上げるリカルドの顔は、領主というより一人の親として、子を心配する物だった。
「リューリ。お前はとんでもない魔獣と契約したな」
「ハハッ……断る隙もなく強制だったんだよ。 ……言っとくけど、アリア。 家族や領民の皆に危害を加えたら僕、怒るからね?」
父親の腕から降りると、リューリは私の前に来てまだ顔色の悪さが残るものの、そう言ってきた。
「ククッ……はいはい。わかってるよ。小さな私のご主人様」
私はその様子に小さく笑って、頭をリューリの身体に擦り付けたのだった。
「ところで、アリア。その身体のサイズもっと小さくならない?そのままじゃ家に入れるかわからないんだけど…」
「ふぅむ……出来なくはないけど、力がその分制限されるんだがねぇ……。まぁ、仕方ない」
おっと、これはあの謎のスキル《変身》をする時じゃないか? 確かに、今のままじゃ、街中を行くのは得策じゃないし……。 よし!やってみますか!
イメージは普通の飼い猫サイズだよねー…。んー……。
私は、リューリに言われると頭の中で小さくなるようイメージをした。すると、身体が淡く光りみるみるうちに成猫サイズへと変わったのだった。
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