【3・デアイ】
耳をすましながら魔素を操作して周囲を探索するが、何か特段怪しい気配は無い。
しかし、こちらに近付いてくる気配が二つ。足音からして大人と子供。血の匂いはしないけど、警戒をする事に越した事はない。
「おじいちゃん! 洞窟があったよー! 雨宿りしようー!」
「でかしたわい。ここまで、森に入ると戻るのはちと骨じゃったからの」
近付いてくる2人から離れるように、私は洞窟の奥へと引き返し、様子を見る事にした。
魔物である以上、討伐される可能性がある為、安全第一の行動だ。
べ、別に怖いからとかじゃないからね?!
そうこうしていると二人は洞窟の出入口に着いたようだ。
そして、大人は肩がけのバックからタオルのような物を取り出すと、子供に渡していた。
「ほれ、これで少しでも拭いておけ」
「ありがとー。 でも、この森で雨なんて珍しいよね」
「そうじゃのぉ…。 霧は発生する事は稀にあるが、あれは魔素の濃度が濃くなり視覚化がされた物じゃからな。 なんにせよ、仕留めた獲物はリューリ、お前さんのマジックボックスに入っておるから鮮度とかの心配はないが、この雨と森の事を考えると、無理は出来んから止むまで足止めじゃな」
「あー… 早く帰って皆に食べて欲しいのになぁー…」
わぁーお、《魔素の森》に獲物を仕留めにくるって凄いなぁ…。見た感じ、子供は10歳前後。可愛らしいけど、将来有望のイケショタだ。
大人はガッチリとした体躯で中々強そうな感じ。若かりし頃はさぞイケメンであったと思う。今でも、歴戦の猛者って感じで渋いイケおじだ。
「しかし、どうやら、この洞窟には先客がおるようじゃのぉ…」
やべ、おじさんがこっちに気付いたっぽい。表情には出さず、内心オロオロとしていると、おじさんが奥の岩陰に隠れていた私の元に警戒しながらも近付いてきた。
子供がおじさんの言葉にハッと警戒して、おじさんの後ろに周りつつも、腰に差している剣に手をかざしながらおじさんと共に近付いてくる。
「何者じゃ、大人しくでてきた方が、身のためだぞ?」
ヒリヒリするような気配を放ち、私に言ってくるおじさん。
ぇえい、せっかく異世界に来たばっかりなんだからやられてたまるか! もしもの時は、魔法をドカン! だ。
「……… せっかく寝ていたのに邪魔してきたのはお前達だろう? 取って食いやしないからそんな警戒するんじゃないよ」
内心はビビりながらもこのお猫様の風体の為、ゆっくりと優雅にそして威厳のあるように姿を現しながら、私は2人の人間を見下ろした。
「な、なんと!……… お主はっ!」
「ふぇ、フェアリアルキャットだ……」
おじさんと子供がそれぞれそう言い驚き過ぎながら呆然と私を見上げた。
「なんだい? 姿を見せろっていうから来てやったのに失礼な人間達だねぇ。 何か用かい?」
「しゃ、喋った……」
「こら! リューリ! しっかりせんか!……… すまんの。 気配が弱かったから小物の魔物かと思ったが、まさか、お主がおったとは、何故、魔素の森の此処に?」
「ふん。 そんなのお前達に関係あるのかい? まぁ、この天気だ。 たまにはいいだろうとゆっくり寝ていたのさ」
未だ呆然とする少年のリューリ。それをおじさんが叱ると私を見て、腰のロングソードから手を離し苦笑いをしたのだった。
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