第3単位 新・真・新生活

「ついに高校生活の始まりだ!年下同級生に変な目で見られる心配もない、

身分なんか偽ってでも平穏にすごしてみせるぞぉ!」


校門の前でそう叫ぶバカの姿がそこにはあった。


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東京都立業等なりひさ高校 偏差値75

東京都内でも屈指の名門高校であり、受験倍率は少子化の現在でも8倍に及ぶ。

特筆すべきは高校在籍期間が5年あり、その期間のうちに大学卒業レベルの学力を得る。その生徒たちは大学卒業生の子らと比べても頭一つ抜けている。ただ、その段階レベルまで到達するには生半可な努力では足りない。

それでは、なぜその生徒たちはそこまでの成長を可能とするのか。

それはひとえに留年回避のハードルが高すぎることにある。五年間の授業単位数、300単位のうち、五年間で落としていい単位数は10未満となる。が、試験そのものの難易度、生活態度、学校活動、そのどれもに日本学生最高水準を要求される。

しかし、不思議と留年生少ない。ゆえに業等には


「怪物がいる」


ささやかれている。





---------------------一か月前

「はぁっはぁっ27827827827827827827827827827827827827827827827827827827827827827827278278278278278278278278278278278278278278278278278278278278278278278278はどこだぁ!」


ヒソヒソ「あの子おかしくなったのかしら」

ヒソヒソ「勉強のし過ぎかしら」


「うるせぇ!聞こえてんぞ!〇にてぇのか!」


「「ヒェッ」」


「どこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだ…

268270274275277278…あ、あったあったぞあああああああっっっっっったぞ…

は、はっはははははっはははははははははははははははは!これで終わったんだ。

ついに!この一年が!終わっt」

痛っ。あえ?景色が歪んで…


「静かにして!お兄ちゃん、私もこの学校は入るんだから!あれ?ちょっとお兄ちゃん?おいクソ兄貴!あ、強く叩きすぎた」


-------------------------------現在

4月8日 晴れ

勉強する、と覚悟したあの日から1年…あの日から全ていのちを懸けて勉強をした。同級生(人生の後輩)から「睡眠時間とってる?」と聞かれたとき、


「ジカンって何?」


と返答するぐらいには勉強していた。自分の胸に行く先不明の復讐を刻んで、未来をただえがき続けた。ときに簀巻すまきにされても、ベッドに縛り付けかんきんされても、逆十字固めプロレス技を決められて正月特番を見せられても、頭の中では勉強を続けた。

母が成田山に俺と妹の受験祈願にお守りを買ってきたときは


「神の力も食っちまえば俺のもんだよなぁ!

                 ゴクンッ

これで受験も確定だよなぁ!」


その時の家族の絶望の表情は今も覚えている。

そうしてやってきた受験当日、周りの受験生を蹴落とすために身に着けた

シャーペン妨害秘技『カチカチ』

         『筆音爆弾ダイナマイト

精神鼻腔攻撃『スルメイカ(口臭)』

      『手空偽屁砲フォルスバーン

+α(学力)を使い完全なる勝利を収めた。

そうして、一年に及ぶ戦いに幕を閉じた。

‐完‐

~~~~~~~~~~~~~~~


「はぁ~今日でこの日記も終わりかな。いや~それにしてもこの一年でいろんなことがあったな」


親に「眠れ!」と言われ簀巻きにされ、それを突き破いて勉強をし、結果的には紐でベッドに縛り付けられて寝かせられたこともあった。

正月も勉強してたら押さえつけられて正月特番を見させられ、デスロールしながら振りほどいたら父さんに逆十字固めで絞められ寝かせられた、なんてこともあった。

さすがに効いたのかお守りを食ったとこに居合わせたときの母さんとひびき(妹)は無表情で涙を流していた。


「ほんとにいろんなことがあったな~...........

いや俺何してんの。ガチモンのキチガイじゃん」

「まぁでもべつにいっか!結果良ければすべてよしっていうもんな」

そう脳死で自分に言い聞かせた。

             ピロンッ

「お?LINEか」

ちなみに勉強する、と覚悟した日にスマホは地下3メートルに埋めた。掘り返した時には通知が50万件を超えていてさすがに驚愕した。

「え~っとそれで誰からのメールだ?


あ、あかり!?」


『やっほ~元気してる~?なんかLIME繋がってないっぽいけどなんかあったの?

そんことよりさ高校決まった?』


「な!そういえばLINEの返信してなかった!どうしよどうしよぅうう!いや落ち着け素数を数えろ。そうだ、正直に話して一旦落ち着こう...........ふぅ~」


『久しぶり。受験期入ってからスマホ封印してて気づかんかった、すまん。

んで、高校は業等高校に行ける』

『え!?マジで!?私も同じ高校だよ!』


「え?」


「あいつ、そんなに頭よかったのかよぉおおおおおお!」


俺の平穏な学校生活のためなんとしてでも俺が一つ年上だということ、しかも事故って中学留年なんてことは知られてはいけない。俺はそのために中学の業等の出願希望者に他の高校の良さを説い洗脳したっていうのに。


「いや待て、それは早計じゃあないか?あいつは俺より一つ上の学年のだからもし仮に噂されたとしても1年にまでは広がらないはず!広がったとしても精々部活動の範囲限定のはずだ!よし、俺の勝ちだ…」

                      ピロンッ

『私さ~留年しちゃってね。しるべと同じ学年からなんだよね~

また一緒に勉強しようよ』

「」


そうして俺の高校生活が始まった。


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「ついに高校生活の始まりだ!年下同級生に変な目で見られる心配もない、

身分なんか偽ってでも平穏にすごしてみせるぞぉ!」


とはいえ妹とあかりという危険因子がいることを忘れてはいけない。いざと

なったら口封じをしなければ...........


「ねぇお兄ちゃんいぬのえさ、いま変なこと考えてなかった?」


「へ?もし俺の中学留年の話が漏れたらお前を始末しようだなんて考えてないよ?

っていうかいま『お兄ちゃん』のルビおかしくなかっt」

                    グイィッ

「おい、余計なことしたら〇すぞ、お兄ちゃんゴミカス。ただでさえ合格発表のときに悪目立ちしてんだから」


「ひゃヒャイ…胸倉はやめて…」


俺が目覚めて受験期になってから妹はキレるとゴルゴになるようになった。

今では尻に敷かれているどころか足で踏まれめり込んでいる。貫通する日も近いかもしれない。


ヒソ「あの人って合格発表の時に叫んでた人よね」

ヒソ「ってことは隣の人は発狂してた人を気絶させた人!こわいわ~」


すごい言われようだ、実際事実ではあるのだが。それよりも俺の肋骨を無理やり掴んで引きちぎろうとしている妹は何をやっているのだろうか。


「あの~響さんなぜ肋骨を握ってるのでしょうか」


「ちぎるためよ」


「その心は」


「むかつくから、お兄ちゃん○○な○○〇が」


「そのルビはさすがにまずいと思うっって痛い痛い痛い!え?ちょがちで引きちぎんの?ちょさすがにこれ以上はしぬっつっって。落ち着こうぜ、な?なななんで力強くすんの!?これはまずいって!いやっちょっまっしっ!!」


------------------10分後


「いっっっってぇ」


「もうちょっと静かに歩けないの?」


「いやだって遠すぎんだろ!もう10分以上経ってんだよ。受験会場の場所が本棟かと思ってたけど、あれ第十五棟だったのかよ!って思うだろ」


「お兄ちゃんオープンキャンパス行ってたじゃん?」


「行ったけど、ずっと寝てた」


「え~さすがに引くわ」


こんな他愛のない会話をするのもいつぶりだろうか。約一年ぶりのまともな会話、妹にとっては約二年半。事故に遭う前はそこらにいる姉弟関係と同じだった。小学高学

年になって突然冷たくなる妹、「洗濯を分けて!」なんて言われて泣きたくなるほど、かわいくなかった。どのくらいかわいくなかったかというと。


『妹がいるなんて僕ならあんなことこんなことをしちゃうでゲスw』


そんなことをいうやつには、


『俺の妹が手ぇ出したくなるほどかわいいはずねぇだろ!』


なんてぶち切れるほどにはかわいくなかった。


そんな妹とも今は仲良くやれてる…と思う。実際、今はこうやって仲良く(?)話せている。あの地獄のような一年、それに比べると今はまさに楽園だ。最初はみんなより年上だってバレるのが怖かった、いや、今も怖いけどこんな生活が続くならバレたっていいのかもしれない。


「どうしたの?急に黙りこくって」

「いや別に…こんなんでもいいかもなって思っt」


唐突に後ろから衝撃が訪れた。というかぶつかられた。後ろからぶつかられるっていうならさすがに俺だって

「おいおい肩折れちゃったよ~どう責任取ってくれんの慰謝料ちょうだいよ」

なんて言っちゃいそうになるよ。言っちゃうよほんとに、怖いからね俺のマジギレ、

ただ今日はちょっと気分じゃないというか。


ブツブツ「どうして俺が留年するんだ。何が部活をちゃんとやってないだ。ふざけやがって、全員許さない許さない許さない」


明らかにガリ勉タイプの男、所謂『チー牛』と言われるタイプだ。


「なんだあいつ?」

「大丈夫かな?あの人、前のお兄ちゃんみたいな顔してる」

「え?話しかけんの?」

「だって死にそうな顔してるもん。ちょっと行ってくる」


にしても前の俺、あんなにやつれてたのか『人の振り見て我が振りを直せ』とはよく言ったものだな。これから学校中の女子とチョメチョメするためにも清潔感には気を付けよう。


「あの~大丈夫ですか?具合がわるそうですが」

「うるさいクソ女!この僕に話しかけるな!」


(え?なんだあの男は人の妹にクソ女とはゆるされないなぁ!)


「あ?なんだとゴラァ!少し年上だからって舐めた態度取りやがって。

てめぇだけは確実に〇ス。女にやられる屈辱を味わいやがれ!」


(ま、まずい先に響の方がキレた。さすがに妹を殺人犯にするわけにはいかない!

なんとしてでも止めなくては!)


「クソ女も老害どもも僕のすばらしさをわかってくれないなんてふざけてる!ふざけてるふざけてるふざけてるふざけてるふざけてるふざけてるふざけてるふざけてる!」

「おい!あんた!さすがに落ち着け…は?」

辺りが突然暗くなる。太陽は夕暮れの色に染まり、寒気と本能からの危険信号が鳴り響いた。

虫が落ち葉をうごめくような音が鳴り響く。

突如とした喪失感。ポケットに入れてた大事なものがトイレの中に落ちる直前のような、大切にしてた宝物を落として壊してしまう直前のような、失ってしまうかもしれないという絶望とまだ失わずに済むかもしれないという希望が脳裏に宿り、それを夕暮れと紅の血が塗り潰した。


何かが貫いた、妹の体を。

あの日一羽のカラスを助けようとしたときよりも早く、速く駆け出した。


「ひびき!」

胸に大きく穴が空いていた。

「ち、血が!はぁあはぁあし、止血しないと!」

普段、かさぶたから見える血とは違う紅い血。ただそれを抑えようと服を破いた。

「ダメだ、これじゃ!誰か救急車を呼んでくれ!だれか…は?」


巨大なムカデ、のようなムカデの集合体、人の形になろうとして仲間を何度もこぼしている。まるで自分は人間だと主張するように。


「エモノかエセ オ怜がトッた’”」オ前も獲モノ?」


今の声、さっきのぶつかってきた奴かなのか?


「コッチ見nナ」


黒い何かがこちらに向けて発射された。

「ひっ」

情けなくて弱弱しく怯えながらもなぜか体は響を覆った。

「がぁああっ!」

痛い痛いいたいいたいい熱い痛いイタイ熱いあつい痛い痛いいたいいたいい熱い痛いイタイ熱いあつい痛い痛いいたいいたいい熱い痛いイタイ熱いあつい痛い痛いいたいいたいい熱い痛いイタイ熱いあつい痛い痛いいたいいたいい熱い痛いイタイ熱いあつい痛い痛いいたいいたいい熱い痛いイタイ熱いあつい痛い痛いいたいいたいい熱い痛いイタイ熱いあつい痛い痛いいたいいたいい熱い痛いイタイ熱いあつい


左肩から血が流れている。想像よりも熱い。漫画とかゲームとかの怪我したシーンで言われる『アツい』よりもずっと熱い。もしかたら熱い、と思いたいだけなのかもしれない。


「痛いイタイ痛い痛い!」

なにもわからない。できるのは叫ぶだけ

「あんたさっきぶつかったひとだろぉ!さっきのことならあやまるからさぁ!」


「ムカツクノ礎のオんナ」だカラ子ろス」


話がつながらない。対話解決の希望さえも失われるような会話。

ほんとに怪人なのか?特撮のドッキリかなんかなのか?

んなはずないだろ!現実から逃げてどうする!


「ふっざけんな!このばけもんがぁ!」


転がってる荷物の中身を投げ続ける。


「オ前なnい」ムカツ化セたいノ‽」


左手はほぼ動かない。足もすくんで立ち上がらない。一瞬よぎる、響を置いて逃げる選択肢を振り払う。黒い集合体がこっちに、やっと形になった手を向ける。怯えか恐怖か勇気かはわからない。けど、必死に妹を抱きしめた。



--十秒

まだ意識があった。神の気まぐれかたまたま外れたか。それでもまだ妹の呼吸がかすかに聞こえたことがただ、ただ、うれしかった。


「おい!勝手に絶望すんな!さっさと逃げろ!」


「きみ!早く逃げるぞ!ほら!早くその子を連れて!」


「は、はい!」


走った。痛みに意味なんてなかった、左腕の制御もないに等しかった。それでも響を抱えて走ることができた。



「とりあえずここの物陰で応急処置をしよう。早くその子を診せろ。とりあえずは安心してろ」


銃を持った学生服の女、銃とは全く似合わないような顔立ちをしている。遠くから銃の音がして、硝煙のにおいが鼻に刺さる


「あんたら何者だ?この学校の生徒なのか?」


「あぁそうだ」


「なんで銃なんか持ってるんだ!?」


「戦うためだよ」


「戦うって、あの怪物と!?いかれてる!」


「うるっさいなぁもう!黙ってて!こっちは早く診てサポートしなきゃいけないの!向こうでまだ二人戦ってるのよ!」


「わ、わかりました。」


鳴りやまい銃声が沈黙が引き立たせる。


「妹は助かりますか?」


銃声が響く。


「へ~妹なんだ。さっきはきつく言ってごめんね。そりゃ必死になって当然だわ」


「それで助かりますか?」


「何その質問?助かるって答えてほしいの?じゃあはっきり言わせてもらうよ。

無理よ。まず助からない。辛うじて心臓とか重要な血管には当たってないけど肺は思いっきりやられてる。私が付きっ切りでみればあと五分は持つわ」


「じゃあ救急車は!」


「ここには来ない。そもそも来れてもあのバケモンがいるから無理。」


「じゃあもう、待つしかないんですか…!」


悔しいとかじゃない憎い、自分が。

復讐とかでもない恨めしい、自分が。


「あと一つだけあるにはある、助ける方法が。」

「何が必要ですか!犠牲にできるなら自分の命ぐらい懸けれます!」


できないことだらけで、情けない。


「あの怪物を倒すことそれだけ。でも倒す前に死んだらそのまんま、ここに置き去り。私が向こうの戦いに参加すれば勝てるかもしれない。でもそしたらこの子は死ぬ。でもそうしないと全員死ぬ。わかったでしょ!今の状況が、あなた一人じゃ到底、変えれないことに!だからね、言うわ。妹は諦めなさい。」


じゃあもう手段はないな…

もう救えない、むだ、無駄、ムダに終わる。

それで、どうした?だからって動かないってことじゃないだろ!


「じゃあ俺が倒せばいい」


「あんただってその肩の傷、左腕取れかかってるじゃない。無駄なことはやめなさい」


「右腕を使えばいい、それでも無理なら足でも口でも何でもいい。

なんでもいいから銃貸せ」


「銃初体験がまともに撃てるはずないでしょ。諦めなさい!」


諦めきれんねぇんだよ!だから言ってんだろ!


「じゃあこの拳銃でいい」

「ダメよ!行っちゃ!戻ってきてあなたまで死んでしまったら!ちょっと待って!

あ!また血が…早く抑えないと、でも早くいかないとみんなが…で、でもここで見捨てちゃ、また…!」


今までの日常が終わってしまうのは、俺にとって死も同義だ。

覚悟は決めた。どうせ死ぬっていうんなら、最高の地獄を選んでやる。



--------------------------

「おい重野しげのぉ!同時に右腕からぶっ飛ばすぞ!」

「了解です!」    ダッダン


はじけ飛ぶ蠢く虫たちがすぐさま元の形に戻ろうとし、自分とすぐさま距離を離す。


「くっそキリがねぇな」

「はぁはぁ!どうしますか、先輩!」


黒い人型の塊の手が両方に照準が合った。


「重野!避けろ!」


絶望、もはや一種の諦観。誰もがここでは目をつぶった。

          ダンッ

鉛と虫のぶつかる音で目を開けた。

目の前には血まみれのまま、取れそうな左腕を垂らしながら拳銃を構えるイカれた男が立っていた。


---------------------------------------

自然と銃は撃てた。反動は予想よりも少なかった。撃つ以外にもう選択肢存在しえない。右腕で構えた銃で化け物の発射物を打ち落とし、左腕を盾に使い一撃を防いだ。


「いってぇなぁっ!」


黒い塊が首とは言えないような大きさの塊をかしげる。


「オ前なンカおkあシイ」タオれ無イ¿」


黒い塊が照準を向ける。一撃は太ももをえぐり、二撃目は左腕をとばした。

それでも足は勝手に前に進む。激情に身を任せてただ進み右腕で撃つ。撃たれた箇所が飛び散りまた体に戻ろうとする。


「ふざけやがって、お前みたいなクソ野郎が俺の妹の命を握りやがって…!」

「ナンだおマ絵!」くルナ!」


次の二撃で左耳をえぐられ腹を削られた。それでも痛みはない、いやなくていい。


「ナンNあんダおマエハ!」


心に身を預ける、その激情に身を任せるだけで今はいい。

俺もあんな風に、怪物ばけもんみたいに汚く強くなれたらな、なんて、そんな願いに身を任せればいい。

きれいなようでどす黒い、その想いを身にまとって戦えればそれでいい。

                       カチッ

「ナンだそのカ光ッてルのは」


唐突に光に包まれた。

自分の内から外から体が替わっていくのが分かる。本当に子供の頃に憧れたヒーローの…

「変身」




辺りが光に包まれる。黒でも赤でも青でもない、純粋な光


「嘘だろ、なんでここで二体目の怪人化が起きる!?」


「先輩!攻撃許可を!」


「さっきまでは敵では無かった。

もしかしたら末城すえじょう先輩と同じ可能性がある」


「でも僕は信じれません!本当に自分の意思で変身できるなんて!」


「なんだこりゃ、体が軽いし、左腕まである」


「ナンだオ前も怪人カ」な釡ダ」

周りがよく見える、よく聞こえる、研がれた鉛筆のようなさわやかさが身を包んでいる。そして、やることも定まった。ムカツクなら排除だ。


「ハハハ!虫退治だ!」


丹精込めて虫を一匹ずつつぶしていくように嬲り続ける。

「おレタチなカ間だ!」ヤめて!」


「聞こえないなぁ!」

目の前の黒い塊から俺の左肩をとばした黒いなにかが放たれる。それをゆっくりと観察しながら握りつぶした。

「へぇムカデにカブトムシにゴキブリか。お前の醜さにはぴったりだ」


妹のためという自我を強制し殴り続ける中で、楽しみを見つけようと殴り続ける。

「ヤメっぼク画消エてク」ツブさ無イデ」

「じゃあさ!さっさと消えてくれよぉなぁハハ!」ハハ」


慌てながら、攻撃しながら、逃げ惑う。そんな虫に同情の余地なんていらない。立場をわからせるために。

残った虫を潰していく、間違いのないようにしっかりと、プチプチと

「ユぎウキ」

「ハハハハハハ!これでおしまいだなぁ!」

プチ

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