続きは放課後に

坂餅

続きは放課後に

 学内がにわかに騒がしくなる昼休み。


 廊下を行き交う生徒達は様々。速足で廊下を駆け抜ける生徒、仲良く談笑しながら広がって歩く生徒、誰かと待ち合わせしているのか、廊下の端によって首を動かしている生徒など。


 そんな廊下を歩いていると、前からあの子がやって来た。だけどあの子は一人で歩いていなくて、あの子を挟むように二人の生徒と話しながら歩いてきていた。


 どうして私以外の女と歩いているのかな?


 純粋にそう思った私は、正面から歩いてくるあの子を目指して足を速く動かす。


 あの子が私に気づいた。少し驚いたような、丸っこい目を見開いて、すぐに顔を逸らして緩くウェーブしている茶色の髪の毛を触る。


 やがて私とあの子の距離はもうぶつかってしまう程近づく。あの子を挟む二人は私の通る道を開けようと、あの子から離れる。


 だから私はこの子の手をつかんで、人目を憚らずにその唇を奪う。


 周囲が騒がしいけど、周りの音を遮断するためこの子の味に集中する。


 甘い吐息がこの子からこぼれるけど、それでも私は緩めることなく貪りつく。甘くて手足が痺れてくる心地良さ。


 嫌だ嫌だと抵抗するそぶりを周囲に見せながら、しっかりと私を味わってくれている。


 私一人が悪いみたいだ。


 だから少し意地悪をしよう。


 私は唇を離す。すると蕩けた顔で私に縋り付いてくる。私も名残惜しいから止めたくなかった、でもあなたが私を悪者にしようとするから仕方がない。


 そっと私は耳元へ口を近づけて囁く。


「続きは、放課後ね」


 そして私は何事もなかったかのようにこの子を置いて行く。


 背後であの子の崩れ落ちる音がした。


 ああそうだ、放課後は私以外の人と関わったことに対するお仕置きもしないと。


 放課後が楽しみだ。

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