第3話 Regret ★
https://youtu.be/azV-eM5UKNM
※このシーンで演奏している想定の楽曲です。聴きながら読むと雰囲気を楽しめます。
歌声が聴こえる。
優しくて温かな歌声。
何だろう。夢でも見ているのだろうか。
やがてその歌に寄り添うように、美しいギターの音色が流れ始める。
不思議な空間だった。
美しい夕焼けの空の下。公園の片隅。
ここだけ世界から切り取られているような気がする。
同じ制服を着た二人の男子生徒は、相手が奏でる音に自分の音を合わせたい、合わさりたい、となぜか強く思った。
抗えない衝動だった。
自分がどうして歌っているのか、なぜギターを弾いているのか、二人ともよく分からないまま、ただ心と体が勝手に、お互いの音に呼応しようとする。
そうして響き渡る歌声と、爪弾かれるギターの音が、心地よく自然に調和していく。
重なり合った声と音が、空からキラキラと降り注いでいるようだった。
まるで、奇跡の光のように。
曲の最後の一呼吸、ギターのストロークが鳴り終わる。
すると辺りはしんと静かになった。
二人は、呆然としながら初めて顔を見合わせた。
視線が合うと同時に、心臓が跳ねる。
そして、二人の目から涙が、ぽろりとこぼれ落ちた。
「「は?」」
二人の第一声が重なって、一瞬時が止まった。
「う……わああああーーーー」
顔を真っ赤にした歌の男子生徒が、急に驚嘆の声をあげて後ずさっていく。
「えっ? あっおい! 待て……」
ギターの男子生徒が呼び止めようとするが、歌の男子生徒は「ごめんなさいーーーー」と叫びながら、何故かキャベツを抱えて慌てて走り去っていってしまった。
ひとり残されたギターの男子生徒は、頬を伝う涙もそのままに、訳が分からず、ただ立ち尽くすしかなかった。
「何なんだよ、これ……」
夕陽は今、完全に落ちて、頭上には一番星が輝き始めていた。
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