第12話 修練
気付いたら朝だった。と言う普通の事に驚いて目覚めた。
縁側に出てみたら、奇麗に手入れされた枯山水の庭があり、石造りの灯籠が朝日のなかで露に濡れて輝いていた。
後ろから蒼が声をかけてきた。
「おはようございます」
「おはよう、おかげでグッスリ眠れたよ」
顔を洗い、身支度してから朝食をいただく。
蒼の料理も、これまた美味い。
ご飯、味噌汁、玉子焼き、アジの干物、香の物、納豆、一般的な朝食なんだけど絶妙の味付けなんだな。
食べながら、将来、僕が一人前に成ったときに、蒼をスカウトしようと心に決めた。 師匠との交渉が要るけど許してくれるよね。
朝食後、お茶を飲みながらまったりしていたら、じっちゃんとばっちゃんが訪ねてきた。
自分達の仙界(じっちゃんとばっちゃんの仙域も連結してるそうなので、小さいながらも仙界だ)に帰るそうだ。 また、来週此方に来るので心配するなと言われたが、もっと心配して欲しい。初心者なんだぞ。
そうそう、じっちゃんの仙界と師匠の仙界の時間は同期しているそうなんで、現し世と行き来する僕と違い、門を通って自分の仙界に戻りまたこちらに来た場合も、ちゃんと時間が進んでいるんだって。
だから、行き来しても混乱することはないって・・・そうなんだー。
「ところでじっちゃん、叔父さん初め僕らはじっちゃんの死体見てるし触ってるんだけど、どんな手品したん?」
「あぁ、あれは現し身の応用だよ。有機物で儂そっくりの人形を作ったんだ。生き物を作れないことを逆手にして、死体を作ったんだな。
ま、死因もちゃんと仕掛けといたから解剖されても偽物とは判別できんだろうな」
「僕らは人形相手に悲しんで葬式だしたんだ、じっちゃんもひどいなぁ」
「一度死なんと、しがらみから抜け出せないから・・・皆には悪いことをしたとは思っているぞ」
「じゃあ、3年前のばっちゃんの時も?」
「あれは最初だったから出来がイマイチでな、バレないかとハラハラだったがな」
「あの時、おじいちゃんは大変だったのよ。 何体も試作してはボツにして」
ハァ〜、この人達は、と呆れたが、あとで尸解仙人がこの世から消えるパターンの標準は死体を残さないと知り、二人共、自分の葬式と言う区切りを付けてしがらみを切ったのでヤッパリ誠実なんだなと思った事だった。
屋敷を出て、修行場となる武道場へ向かう。
武道場には既に結城さんが来ていた。 そして師匠だ。
まず、午前中ミッチリと柔術の受け身、剣術の形、木剣を持っての素振の稽古をさせられる。
流石、結城先輩の動きは滑らかで無駄がなかった。聞いたところ、もともとタ●捨流兵法を習っていたらしい。
素振りの後は、デカい木の棒の様な木刀で、教えられた様に八相の構えから蜻蛉を取って(構えて)走り込み横に寝かせた木の束をひたすら袈裟斬りに叩く練習をさせられた。
これは、ひょっとして野太刀自●流、
蜻蛉の構えと言わないところから、師匠は野太刀自●流の門弟だったんだ。薩摩(鹿児島)出身者か?
もしや、有名な桐野利秋(中村半次郎)だったりして・・・
いやいや、それはないな!
とか、考えながらひたすら叩く。
師匠が手本として見せてくれた打ち込みでは、例の猿叫と言われるキェ―と言う掛け声が響きわたる。やっぱり野太刀自●流(薬●自顕流)じゃないか!
でも、チェスト―とは言わないんだ。
結城先輩は別メニューで、タ●捨流の形をひたすら繰り返す。こちらも凄いな。
昼食を取るために一度屋敷に戻り、蒼が作ってくれる食事をいただく。
軽めのツナマヨパスタだ。古風な出で立ちなのに現代風のパスタも作れるんだ。凄いな蒼は!
師匠の世界にいる人達、全員めちゃくちゃハイクオリティな方々ばかりだ。
僕やじっちゃん、ばっちゃんが一般人すぎるので、凄く眩しく見える。
蒼にお礼を言って、午後の修行へと再び武道場に向かう。
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