第10話 ギフトをもらう

雷光氏が僕の頭に手を乗せ、一心に何か唱え始めた。

僕は目を閉じ、立膝で雷光氏に対向している。

雷光氏の手のひらから温かな力が流れ込んできた。

と、突然、目を閉じているのに周りが色鮮やかに見えて来たので、僕はびっくりして思わず声をあげそうになった。


雷光氏の手のひらが離れた。

「終わったぞ。 これで君も我が一門だ。 われらの世界にようこそ!」


なんか呆気なかった。一瞬で済んでしまった。


そういえば、雷光氏の師匠はどなたなんだろう?

僕の問いに、雷光氏は

「一門の中で有名なのは、あの平将門公だな、我が一門は日の本の仙人の三大系統の一つだよ。 そうだ来年には、公のもとへ我ら四人で訪問しようか」

「あと、直接の師匠は鈴木助兵衛先生だ。 知っているか?」


「将門公はめっちゃ有名人じゃないですか!

鈴木助兵衛先生?すんません、よく知らない方ですが、ぜひご挨拶に伺いたいです」


「ま、すぐには無理だな。 まずは、下の武家屋敷の一つを貸し与えるので、暫く其処から舘の武道場へ通ってもらい、精神集中、気の錬成、体術などの鍛錬をしてもらう」


「わかりました」


「現し世との門の時間は止めているので、此方にどれほどいても向こうに戻れば時間は一秒も進んでいないから、安心して修行に励めばいいぞ。

また、現し世に戻って帰ってくる時も此方から出た瞬間に戻るので、時間の無駄が無いからな」


そういえば、じっちゃん達も下の武家屋敷を拝領してるので、自分の世界と半々で過ごしているらしい。


自分の世界

どうすれば作れるのか、みんなは自然に判るようになるから大丈夫と言うけど、不安だ。


ともかく、天守閣そして山城から山裾の御殿に降りる。

歩いている途中

雷光師匠曰く、師匠はこの仙域何処へでも一瞬で移動できるらしく、我々全員を運ぶのも楽勝との事。 しかし、僕のために(ご自分の運動不足解消の為?)歩いていると力説していた。

ありがとうございます^⁠_⁠^


御殿の広間には宴会の準備が整っていた。

雷光邸の執事は、かって雷光師匠が現し世にいた頃からの部下だった勝右衛門さんだ。地仙となっても師匠の右腕を続けている、落ち着いた紳士然とした方だ。

奥を取り仕切るのは、奥さんのケサガメさん。

不思議な名前だけど、昔からのめでたい名前として、明治大正昭和初期まで結構女性につけられてたらしい。

やはり、地仙なんだけど自分の仙域を師匠の世界と繋ぎ殆ど此方側に居続けてるとのこと。 師匠、好かれてるね。

尚、複数の仙域を連結した集合体になると仙界と呼ぶらしい。

一応、二人も屋敷を拝領しているけどほとんど御殿で寝泊まりしてるそうだ。


宴会には、もう一人尸解仙の結城瞳美さんという若い女性が参加した。

三年ほど前に弟子入した方で、鋭意修行中だそうだ。


いゃあ美味かった。酒も美味いし、料理は絶品。

本格的な会席料理で、どんな料亭にも負けない味付けの凄いものだった。 ケサガメさんの料理の腕は天才の域に達してるんじゃないか!?

何より、米、野菜、魚、肉、そね全てが師匠そしてケサガメさん、勝右衛門さんの世界産と言うのが凄い。完全に自給できてる、ほぼ天仙に近いんじゃないかい。

怪しいぬらりひょん呼びした事が恥ずかしい。


宴会後、御殿を辞して僕、じっちゃん達、そして結城さんの四人で拝領した屋敷に向かった。

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