第8話 ギフト
「と言うわけで、君に仙力の付与をしてあげるために来てあげたのに、拒否するんだもんな~」
と、雷光氏
と、そこへ奥の納戸の襖が突然開かれた。
納戸の襖を引き開けて入ってきたのは、妙齢の女性。アルバムで見た若い頃のばっちゃんと瓜二つの女性だ。
彼女は僕を見て微笑んだ。
「やっちゃん、久しぶり! あはは、そういえば私、死んだ事になってるんだった」
そして、後ろを振り向いて声をかけた。
「おじいちゃん、やっちゃん弄るのは此の位にしないと・・・ほら、出ておいで」
その声に、ひょっこりと懐かしい顔が襖の影から顔を出した。
死んだはずのじっちゃんだ。
「え!?」
僕はもう何がなにやらわけがわからず、フリーズ状態で思考が追いついていなかった。
じっちゃんが雷光氏に声をかけた。
「師匠、泰光に付与は終わりましたか?」
ちなみに、僕の名前は、あいらやすみつ、漢字では相良泰光。
古風だろう、じっちゃんがつけてくれた。
学校時代、どこぞの武士か、とからかわれたっけ。
熊本県の前身肥後国の大名、相良(さがら)氏や、同じく肥後国の古刹、相良(あいら)寺とはまっつ〜たく関係無い、SNSに出現するアライさん達とも勿論まっつ〜たく関係ない。
一応、田舎郷士の子孫らしいけど。
師匠?
「じっちゃん、もしかして、もしかして、じっちゃんもばっちゃんも仙人なんか?」
「おう! 雷光師匠から付与をもらい、儂ら二人は今では立派な地仙だぞ、泰光も早く追いついてこい!」
「ばっちゃんも、凄く若返ってる!」
「あはは、おばあちゃんの姿にもなれるけどね、やっぱり女は若いほうがいいだろう? おじいちゃんも、こちらが良いと言ってくれてるし」
そこで、雷光氏が頭を掻いた。
「いやぁ、まだお孫さん説得中で・・・」
じっちゃんとばっちゃんが同時に僕に向かって言った。
「何してる。早く師匠から付与をもらわないか!」
「でも・・・」
じっちゃんが続ける
「なにも怖い事なんかないぞ、師匠の仙域にお邪魔してチョチョイと付与を付けてもらえば、もう立派な仙人だ。 そうすれば儂らの仙域にも泰光は入れる様になるし、本当に良いことばかりなんだから善は急げだ」
で、結局僕は三人に言い負かされ付与をもらうことを了承させられた。
雷光氏の仙域への入口(門、ゲート)という輝く襖に手を触れる・・・驚く事に、指先は輝く襖の中に沈み込んでゆく。
思いきって足を踏み出した。
一瞬光が全身を包み、眩んだ目が再び視力を回復すると、そこは城下町だった!
江戸時代頃の城下町の風景の中に僕は立っていた。
正面にはこぶりな山がありその山頂には小さな天守閣がそびえている。そして麓には石垣に囲まれた御殿の姿が!
御殿の石垣の下には川が流れ、優美な曲線を描く木の橋が向こう岸とこちらを結んでいる。
こちら側には橋に向かう道の両側に漆喰壁の塀に囲われた武家屋敷が立ち並び、その横手には脇道を挟むように町家が並んでいた。
遠くには、一面の田圃が拡がり黄金の稲穂が稔っている。
僕の立っている場所は前後に鳥居で囲まれた広場といったところだ。
すぐ、じっちゃんとばっちゃんが光に包まれて姿を表した。
雷光氏は?
キョロキョロと周りを見まわしている僕の隣に、いつの間にか人が立っていた。
姿かたちはあの雷光氏なんだけど、身長は見上げるほどの偉丈夫。2メートル超えてるんでないかい?
「やあ、やっと来たね」
「雷光師匠?」
「もちろん。 あちらに出してる現し身は維持するエネルギーを少なくするために、小さく作ってるんでね。 驚いたかい。 さあ、こちらだ」
雷光氏が、僕らを誘って御殿へ繋がる橋の方へ向かって歩き出した。
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