第6話 珍入者は仙人様

三十代前半に見える小柄な男は、ゆっくりとお茶を啜りながらニコリと微笑んだ。


「やあ、元気かい若者よ!」

思ったより渋い声で男は話しかけてきた。


「え〜と、どなた様で?」

僕の問いかけに対し

「見てわからないかい、幸運を運んで来る座敷わらし様だ!」


「嘘だ〜! そんな薹が立った座敷わらしいるもんか! いいとこ、妖怪ぬらりひょんだろー」

思わずツッコんだ僕


「いや〜、こんな状況で突っ込んでくるなんて、やっぱり、私が見込んだ若者だ。」


「いやいや、何処から入ってきたの? 鍵かかってたよね?」


「ほら其処から」

男が指差す方向に目を向けると、襖の一枚が光に包まれている。

なに此れ?


「今から私の世界に招待しよう。 私を祀ってくれて、いつも捧げ物をしてくれた。まぁ、あのお団子の礼だな」


「お団子? え、え、お地蔵さん?」


「その呼び名はあまりにも恐れ多い! 私は地蔵尊様には遠く及ばぬ、ただの仙人の端くれだ」


仙人? 妖怪の間違いじゃないかい?


「じゃあ・・・?」


「地仙の雷光と呼ばれているので、君もそのように呼んでくれ」


「雷光? なんかイメージが・・・」


雷光氏?が、お茶を流し込んで立ち上がった。

以外に、小さい!

1メートル60センチないんじゃないか。


「さて、行こうか」


「いやいや、初めてあった怪しい人物に、ハイそうですかとついて行く馬鹿はいないでしょ!」


「素直じゃないなぁ。 疑り深い性格はもてないぞ^⁠_⁠^」


「なに言ってんですか、だいたい貴方は木彫りの人形だったはず、迷って出てこないでくださいよ! 」

トドメの一言

「信じろと言うほうがおかしいですよ!」


雷光氏は苦笑いしながら

「力を失って、現し身をあんな木彫にするのがやっとだったんだから、仕方ないだろう」


「現し身?」


「私の本体は、ほれそのドアの向こうだ。 この体は、私の姿を写し取った仮の姿・・・あっ、ゲームで言えばアバターだな。」


「アバター?」


「仕方ないなぁ。 じゃ、まず仙人の世界の話をしようか。」

雷光氏は、再び座布団に座り込み、お湯をポットから急須に注ぎ始めた。

僕は雷光氏の斜め前に、座布団を引っ張り出してその上に座った。


僕が座ったのを確認した後、お茶を湯呑みに注ぎながら雷光氏がゆっくりと語り始めた。

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