第3話 じっちゃんの家へ行こう

 1週間後、大学時代に母から譲り受けた年代物の中古軽自動車で自宅アパートからじっちゃんの家へ向かうことにした。

 僅かな家具類は引き取ってもらい、アパートは引き払った。本当に身一つの出発だ。


 今まで住んでた所は県庁所在地の中核都市、その郊外だったので、一応生活するうえでの不満はなく満足してたんだけど・・・

 さて、今日からは??


 じっちゃんの家は、引き払ったアパートから車で3時間、鬱蒼とした山の中だ。


 しかし、電気、ガス、電話は完備。

もちろん、ガスはプロパン。台所裏に、20キロボンベ2本が並んで立っている。

 そしてニートぎみの僕にとって必須のインターネット環境も大丈夫。

 山の中なのに、光がきてるんだよな。偉いぞN●T。


 なお、携帯の方はじっちゃんの山のてっぺんに鉄塔を建てている会社があり、文句なしの受信強度で受けることができる。

 ライバル社は県道を挟んで反対の尾根に建てているため、うちの山の影になる。だから安定度が少し悪い・・・いや、使えますよ心持ち電波の受信感度が悪いかな? と感じるくらいなんで。


 さて、国道をひたすら南下すること2時間、途中の市や町のコンビニで休憩をとりつつ両親の待つ実家に一泊。

 じっちゃんの家は、母と叔母が掃除して整理も終わっているので、身一つで行っても大丈夫だと言われている。


 いや〜、恐ろしいほどの掃除、整理のスキルだわ。わが家系にはない叔母さんの力だな。

 掃除のとき、母は叔母さんの付録でついていっただけだろう。

 母さん、胸を張ってもバレてますよ。


 翌日、三桁ナンバーの国道を東へ


 両面を山に囲まれる谷を真っすぐ走ること30分、国道から分かれて県道に入る。ここも両面山に囲まれる谷道になる。

 営林局勤めの我が兄貴は、この山並について四国の山と比べればメチャぬるい低山ばかりとのたまうが、いやいや僕にとっては十分険しい山だよ兄貴。


 しばらく走るとじっちゃん家が属する集落が見えて来る、この集落にある地域唯一の雑貨屋前で自動販売機からコーヒーを買い休憩。

 雑貨屋のおばさんに挨拶をしてから、店の前の十字路を右に折れて山越えの道に入る。


 見上げれば、真後ろの尾根に例のライバル社が建てた鉄塔が見えている。

 山道右手の尾根がじっちゃんの山で、谷底の集落を挟んで鉄塔が立っている。


 山越えの道は峠を一つ越えたところにある地域の氏神様の神社の横を通り、さらに峠をまた超えて最初に走っていた三桁国道と再合流、その先の県境を越えて他県の町に繋がって行く。


 じっちゃん家は、神社の峠の手前から脇道に入りそのどん詰まりになる。

 三方を山に囲まれる盆地に位置し、家の横を沢が流れ、前には小さいが田んぼが作られていて、家の裏手には小さな雑木林がありシイタケの原木が立てかけられている。

 田んぼの横には、かなりの面積の畑があり、季節の野菜が区画毎に栽培され、そこだけ見ればきれいな田園風景だ。


 山越えの道は、一応舗装道路でクネクネ曲がってはいるが走りやすい道だ。

 じっちゃんの家へ向かう分かれ道からはじっちゃんの私道になるので、敷地にそってフェンスが建っている。私道入口の扉の鍵を開けて、観音開きの扉を開いて車を入れる。

 私道だけど、狭いながらも舗装道路だ。

 必要なところには金を惜しまないじっちゃんらしい。

 鬱蒼と繁る杉林の下のため、道の脇にも雑草がそれほど生えていないので、狭い道ながら走りやすい。


 ほどなく、開けた場所に出る。

 じっちゃんの家に到着だ。

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