尸解仙

第2話 じっちゃん

 子供の頃の微かに残る淡い記憶。

 じっちゃん家に遊びに行っていた幼い頃、大雨が続きやっと晴れ間が覗いた日だった。


 じっちゃん家の庭の横を流れる沢の岩に引っかかっていた木彫りのお地蔵さん?

 僕が見つけてじっちゃんに、拾い上げてもらった。

 色々あって、庭の一隅に小さな社を建て、じっちゃんが大切に祀ることになった・・・


 思い出したのは、じっちゃんが亡くなったとのしらせを受けた時だった。


 じっちゃんは、父や叔父が独立して麓の町に家を構えたあと、ばっちゃんと長く二人暮らしだった。

 3年ほど前ばっちゃんが亡くなってからは、ひとりで山の家を守ってきた。


 病気一つしたことのない元気なじっちゃんだったが、一昨日叔父が訪ねたとき、布団の中で眠るように大往生してたそうだ。

 叔父が訪ねる数時間前に、脳溢血で本当に眠ったまま逝っていたとの事。


 叔父の一家、僕の一家、親戚の少ない我が一族で慎ましい葬式をあげ、ドタバタした本当に悲しみに浸る暇の無い一連の行事が終わり、やっと僕はじっちゃんのいない大きな寂寥感を、悲しみを受け止めなければならなかった。


 さて、主がいなくなった山の家の管理を誰にするかで話し合いが持たれたのだが、父、叔父ともに仕事があり、山には引きこもりたくないとの意見の一致となり、結局、1番弱者である僕にお鉢が回ってくることになった。


 ま、自由業だ、小説家だ言ったところで、日銭を稼ぐために大学出てからほぼアルバイターの生活をしているので、拒否権なんぞあるわけがない。

 ただ、父と叔父から管理費としてかなりの援助をもらえることになったので良しとしよう。


 築200年以上の古民家。一本道の山道のどん詰まりにじっちゃんの家はある。

 周りは全てじっちゃんの山だけど、最近は木材の価格も安いし、山の固定資産価値はご想像の通りなんで、父も叔父も山の家に関する遺産相続に前向きでなく、どちらかというと僕に押し付けて後は任せたにしたいようだ。

 従弟達も、我が兄貴も以下同文


 いいさ、将来、重要文化財にでも指定されたら自慢してやる、たぶん無いけど、、、

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