⑧最大の試練と挑戦の成否は?
「お前の言葉は面倒くさい。故に、返事は不要だ。そもそも反論は許さない。お前はこれからこの崖をただ登れ。ララーノには崖の上にいてもらう。ああ、『なぜこんな危険なことをさせるのか』という疑問には答えておいてやる」
翌朝早く。目覚めると俺は何故か切り立った崖の下にいた。眠っている間にここに運ばれたらしい。騎士長は本当に頼りになるのだが、時に、いや、いつも強引だ。元々文句を言える立場にはないが、俺は流石に青ざめていた。この崖は城より高い。これを登れだと? どう考えても無理な話だ。
「お前はどこにいようと、ララーノに会おうとする限りとてつもない妨害に遭う。大雪の前例から考えると、命の危険があるレベルだ。ならばその危険が想定しやすい場所の方がいい。分かるな? 崖なら簡単だ。落ちることだけ気を付けていればいい」
騎士長は、真顔でさらりととんでもないことを話す。俺のために至極真面目に考えてくれたうえで、行動に移しているだけなのだろうが、めちゃくちゃだ。何とか聞いてもらえそうな反論を探して頭を悩ませていると、騎士長はさらに言葉を継ぐ。
「エルドよ、呪いは人が作るものだ。ならば、お前に掛けられた二つの呪いが生まれた理由は、きっと人の心にあるに違いない。私は二つの呪いの根底にある想いは同じだと考えている。愛のために苦難を乗り越えられるか。それほどに自分を愛してくれているのか。きっと、それを問おうとした者が作った呪いなのではないか? であれば、解呪が不可能なことはないはずだ。どうせ元から命懸けなのだろう。それくらい証明してみせろ。私はお前の根性だけは買っているんだ」
惚れっぽい俺は、この言葉を聞いただけで「百人目はもう騎士長でいいんじゃないか」なんて考える馬鹿な男だ。実行と同時に叩き斬られるだろうから、流石に踏み止まったが。
「では、私はこれからララーノを連れて来る。それまでに少しでも登っておくんだな」
「この心臓を取り出して我が感謝を捧げたい」
「今の言葉は悪くなかったぞ」
短く快活に笑ってから、後ろ姿でひらひらと手を振る騎士長は、女性ではあるが本当に男前だ。ここまでしてくれた彼女の労に報いたい。俺は腹を括って、聳え立つ崖を仰いだ。
命綱はいらない。どうせ途中で切れるに決まっている。この手とこの足だけで、この崖を制覇してみせよう。俺は力強く最初の一手を掲げた。
(問)何度も落ちそうになりながら試練を乗り越えていく俺。
①彼に降りかかる最大の危機は何か。
②また、この挑戦は成功するか否か。
※②については、いただいたコメントの多数決で決定。
(期限)2023年1月20日(土)12:00
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