内から叩け
「あの紋章は第2師団、名前の通りセンチュリー家の保有する戦力のナンバー2。いい? 殺さない程度にね」
「対象と接触したと通達せよ。総員、戦闘開始」
隊長と思わしき兵士の号令に合わせて先頭の歩兵が剣を引き抜いて襲い掛かってきました。
フーリエちゃんは箒を呼び出すと柄を掴んだまま上昇。私も同時に箒で浮かび上がってフーリエちゃんとは反対方向へ移動。隊列の後ろへ互いに回り込むことで挟み撃ちを挟み撃ちする形に。
魔法使いはいないようで物理攻撃にのみ気を配ればいいのは正直やりやすいです。魔法は銃弾よりは速度は遅いですが、それでもプロ野球選手の投球くらいには速いので反射神経ゲーなのです。
「
防御を剥ごうと試みましたが魔法を弾かれてしまいました。対策はされていると思っていましたが想像以上に硬い感触があります。弾くでも受け流すでもなく、魔力を霧散させて無力化しているようです。
物理攻撃でしかダメージを与えられない。魔法で物理攻撃とは?? 一旦距離を取って弓兵の矢を避けやすい体勢に移行し、エリシアさんらの方向にも視線を送りつつ考えます。
(見るからに防御は硬いし実際強いのは1回攻撃を当てただけで分かる。力任せでも無理……いやエリシアさんは物理でダメージを与えられている……? 一点集中で弾を……そっか! 硬ければ硬いほど中に衝撃が強く伝わる!)
同時にエリシアさんから渡された鉄球の存在を思い出しました。まさか予測していた可能性が……? ともかく使える物は使いましょう。握りしめた杖に魔力を思いっきり注ぎ、投げた鉄球に向かって魔法を掛けます
「
魔法の息が掛かった鉄球は、それはそれは私の腕力だけでは到底出せないスピードで兵士に向かって吹っ飛んでいきます。
バドミントンのスマッシュと同等のスピードで鉄と鉄がぶつかったら? 答えは明白です。重々しく激しい衝突音が響き渡り、鼓膜をつんざきました。
その大音量と同じくらいに衝撃は凄まじかったようで、鉄球をモロに喰らった兵士は吹き飛ぶように倒れ、後ろと隣の兵士にもドミノのように被害が及びました。
隊列が崩れてしまえば一気に攻勢を仕掛けるのみ。ルーテシアさんが自慢の身体能力と獣人ならではの鋭い爪で装甲の継ぎ目を狙い撃ち。
後方からの撫で切りを屈んで避けると、下半身をバネのようにして後方へ跳躍。飛び越えるような1回転の流れで頭部装甲の覗き穴に爪を引っ掛け破壊すると、パンチの一撃でノックアウト。
更に倒れゆく兵士を足場にして壁蹴りからの体をひねらせて手すりに着地。一瞬の間を入れて寄ってきた2人の歩兵に正面から突撃して、またも爪で装甲を破壊。両腕でまとめて拳の一撃を喰らわせました。
「リラ、受け取れ」
なんとルーテシアさんが手すりの一部を破壊して鉄パイプにして私に投げ渡してきました。また鉄球の要領で鉄パイプをぶつけろ、ということでしょうか。
「
しかし万年運動不足の私。投げた鉄パイプはブレブレのコントロールにより脇に逸れ――鎧の片腹を貫通。そのまま後方の兵士に衝突して止まりました。
鉄パイプの断面は鉄球よりも面積が小さい。よって圧力が高まって貫通したのでしょう。幸か不幸か、照準がズレたことにより命を狩る事態は避けられました。
これで二手に分かれた片方の隊列を無力化できました。なのでもう片方の援護へ回ろうと箒を反転させましたが、そこには3秒前に見たのと同じ光景がありました。つまり全滅。
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