第4話 旅の装備を整えましょう! これなんて絆イベントですか?

「私は提案しただけで着いて行くとは言ってない!!!寝たいんだ!!!」

「お願いですこの街のこと知らないので案内してください!」

「こっちも昨日来たばかりだよ!!!」



 寝たいと言い張るフーリエちゃんを無理やり引き連れ街に出ました。

 まずは服を新調する必要があります。今の制服では動きづらいことこの上ないです。邪魔。

 私は無難な服が並ぶ、無難な外装の店を選びました。ユニ〇ロとかG〇みたいな雰囲気の店で、コミュ障でも比較的入りやすいのです。



「いかにもリラが選びそうな店だね。私もこういう店は好きだよ。コーディネートとか考えなくていいし」

「同感です」



 そういえば家族以外の他人と買い物するのも人生初な気がします。 私の人生、ぼっちすぎ……?

 適当にポイポイと下着をカゴに放り込んでると、「私もこれ買う」とフーリエちゃんが白い物体を入れてきました。



「これって……」



 かぼちゃ型の袋にキュロットの裾がくっ付いたような白いフリフリのソレは。



「ドロワーズ」



  正直に告白しましょう。私はドロワーズを履いてる女の子が好きです。心の中でサムズアップ。

 とりあえず気になった服を一通り揃えたので試着してみます。まずはシンプルにワンピース。



「シンプルすぎる……」



 ファッションを知らない私でも分かります。これは無い。似合わなすぎるっ!

 というか私は魔法使いなのです。それっぽい恰好でなければ意味がありません。となれば三角帽子とローブは必須でしょう。ひとまずブラウスとスカートとローブで組み合わせてみます。



「おお……ほおおぉ……」



 我ながら鏡に映る姿にうっとりしてしまいました。ローブを羽織ってオシャレな羽飾りがついた三角帽子という分かりやすい魔法使いスタイル。憧れだった魔法使いの姿が、今までは単なるコスプレでしかなかった物が、本物となって自分の身を包んでいるのです。こんなん泣くに決まってるじゃん。



「フーリエちゃんどうでずがあああ!?」

「泣きながら言われてもさ……服の色以外、私の服装のまんまじゃないか。もう少し捻ったらどうよ。最近のはもっとオシャレだしさ。私はやんないけど」

「えぇ~ならどうしましょうか……」

「ワンピースにするとか」



 フーリエちゃんが差し出してきたのはフリル付きのワンピース。私には似合わないと却下しましたが、フーリエちゃんに提案されては仕方ありません。

 


「お、おおおおおぉぉぉぉぉ!?!?!?」


 

 しかし意外や意外。自分で言うのもなんですが、結構似合ってるではありませんか。ブラウスとスカートより爽やかで軽い雰囲気、しかし魔法使いらしさは損なっていない理想のバランスです。ワンピースに変えただけなのに、さすがフーリエちゃんです!!



「決まりです! これにします! フーリエちゃんが選んでくれた、ただ一点です!!」

「服装くらい自分のこだわりとか無いの?」



 フーリエちゃんに呆れ顔されましたが、推しに選んでもらったらそれ着るしかなくないですか!?!? もう一生これ着て生活します!!!

 ついでに『東洋の西洋魔術師』とか名乗っちゃいます???



「はい次行くよ」



 次は魔術具店に寄りました。魔法使いには欠かせない杖と箒を買うのです。


 まず杖ですが、材質によって値段はまちまち。そこら辺で拾ってきたような10マイカの杖から、純金製とかいう大富豪が税金対策で買いそうな杖まで様々。

 とりあえずフーリエちゃんに勧められたベーシックな樫の杖を選びました。


 そして箒ですが、単に移動用なら適当な物でいいらしいので、目立たない普通の箒にしました。ただ掃除用の箒と比べて柄の部分が長く、頑張れば大人ふたりが乗れる長さです。


 ちなみに物は手首を振るだけで、異空間に出したりしまったりできるとフーリエちゃんが言ってました。異空間is何とツッコミを入れたくなりますが、曰くそうとしか表現できないそうです。魔法って曖昧なんですね。

 なお前世から持ってきた財布も、中身が異空間に飛ばされたようにすっからかんです。



「財布が嘘のように軽い……。チマチマと貯めてきたお金が……」

「私が持ってる分もいづれ尽きるだろうしねえ。そのときはリラよろしく」

「うごご……ふ、フーリエちゃんも手伝ってください……」

「嫌。精々頑張れ」



 そんなこんなでお買い物は終了。鬱陶しい朝日も、今は優しみに溢れた昼日に変わっていました。

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