キノウエの村ができた。
ハグミの失言で意識を飛ばした私だったけど、もうばれてしまったならしょうがないってことで、ハグミが木材加工を手伝ってくれることになった。
今まではハグミは魔法でできることをどうしても明かさないといけない時は『身体強化』ってごまかして凌いできたらしいんだけど、実のところは『馬鹿げた超怪力』って魔法らしい。
性能の確認のために、魔法を許可して試しに世界樹に斧で一振り入れてもらうと、まるで豆腐に包丁を入れたかのように、綺麗に一振りで世界樹の大木が両断された。
少しでも品のある魔法に見せるためか、動きは貴族の嗜みみたいに緩やかかつメリハリのある所作で斧を振り上げ、踊りの一部のような動きで振り下ろすと、品なんて皆無な勢いで世界樹が倒れる。
次から次へと、再現なく。まるで誰かに秘密をばらされてしまった八つ当たりの世に……。
私とウエさんの一族の気持ちはこの時ばかりは同じだったと胸を張って言える。
──絶対にハグミを怒らせないようにしよう……。
たくさんの原木を確保できたら、いよいよ板材へと加工をして、念願だった各々の家を作る計画を立てる。
けど、その邪魔をするのが世界樹の本数を減らしても生えてくる雑草達だった。
雑草の被害は抑えても際限なく発生するし、いっそ回避する手段がないか……。注いてまたしても画期的なアイデアが思いついた。
──高いところに行けばさすがの雑草達も茂ってこないはず。ツリーハウスを作ればいいんじゃないか。
また反対意見がたくさんでるだろうし、何か説得するための都合のいい言い訳を考えるけど、その考えた言い訳は必要なかったようで。
──もう好きにしてください。
と、快く許可をしてもらえた。早速才能を燻ぶらせていた、カンナさんとナタ君に木材の目途が立ったと伝えて、私の理想のツリーハウスの支持を出す。
等間隔で差し木の植林をしてただけあって、いい感じの距離感の空いたツリーハウス群が作れそうで、いっそのこと出来上がったらこのツリーハウス群で村を名乗ろうって提案した。
そこからはカンナさんとウエ君にも一時的な魔法の許可をだして、『木材加工』『建築』の魔法を駆使して、素敵なツリーハウスを作ってもらった。
みんなようやく広い家にそれぞれの家族で住めるってなって、信仰商会を立ち上げたときと同じような盛り上がりで宴を開いた。
その宴の中で、この村を作るって提案した言い出しっぺとして、私が村の新しい村長に選ばれて、村の命名権も与えられる。私のネーミングセンスは絶望的って説明しても、文句は言わないとのことなので、ネーミングセンスを光らせて、キノウエの村と命名する。
単純がやっぱり一番。木の上だからキノウエの村なのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます