土地のタメになることでも、やりすぎはダメらしい。
眼下に広がる広大な樹海。世界樹の様子を調べると体力に変化はないけど、その代わりに世界樹に作れた大気中の地力がとても濃い状態になっていた。
サイズは少し小さいけど、それでも今下で育った木々ままぎれもない世界樹で、説明を話半分で聞いていたみんなは何が起きたか理解できない様子。
それにどうせ出来っこないと心のどこかで思っていた様子のハグミは目の前で起きた現象に絶句していた。
──地力の過剰供給は植物の著しい成長を促す。
そう、辺りに植えてあったベリーの低木や、ハーブやマメ科の植物たちがその成長力で蔓があっちこっちにぐんぐん伸びたり、もともとあった道が見えなくなるまで生い茂る。
ひとことで言うなら……、地獄絵図……?
もう少し段階を踏んでやるべきだった実験を、いきなりできる限りの最大で理想を突き詰めた環境で実施してしまった。その弊害が……。やりすぎだった……。
もしもこの辺りに植えてあったのがトゲの鋭い植物とか毒があるような植物だったら、大惨事だっただろう。今でもまぁ……、大惨事ではあるんだけど。
どうにか自体を落ち着けられないかって考えて、この世界で打てそうな一手を考える。燃やすのは危ないし。微生物でどうにかできる問題でもない。奉納は私にはできないし、と考えて──ひらめいた。
──メギなら何とかできるかもしれない。
元々あった町を根っこの地力吸収を使って上手いこと解体というか、跡形もなく消したんだし、あの方法なら過剰な地力を刷って世界樹の養分にできる。
ことを説明して場所を離れようとしたら、みんながもう終わりだと言いたげな表情を浮かべてみる。言ったことを思い返せって抗議を受ける。
町を消した方法でメギに植物をどうにかしてもらう。
あぁ……、なるほど。確かにあの場には人がいなかったらどうなるか分かんないのか……。
──まぁ、月が変わる時の地力徴収でみんなには何にもなかったから大丈夫でしょう。
そうは伝えても、人でなしとか、駄女神とか、言いたい放題不敬な言葉をみんなが言ってくる。助かった時は……、こき使ってあげよう。
世界樹に戻るとメギが下の様子を見て何してんの……? ってドン引き気味に言ってきた。私の成した偉業は先代の女神様にとっても理解しがたいことだったらしい。
でも、下でみんなが大変だから地力の吸収で自体をどうにかしてほしいって伝えると、あの町を解体した時のように地表の地力を吸い上げて、とりあえず収集がつかなかったマメとかハーブとかを枯らせることはできた。
ちょっともったいない気もするけど、さすがに優先すべきはみんなだし。慈愛の心をもってみんなを助けると、メギとか村のみんな、それにハグミに正座させられて、何事にも限度とか加減があって、それは女神の立場だからといって同じだとありがたいお説教をいただいた。
やったことは奇跡なんだけど、ありがたみを超えた奇跡はありがた迷惑にあるって知って、私は全知全能の女神に一歩近づいた。
もしも私がこの地で本を書き残すことがあれば絶対に忘れない教訓として書いておこう。
世界樹の量産は画期的だけど──ありがた迷惑って要件でめちゃくちゃおこられると。
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