いろいろな野菜の栽培を始めてもらう

 先日、ウエさんたちの一族に持ち掛けた農作業を稼業にする提案だけど、これは思った通り、ほとんどの人達が是非その提案を受けさせてほしいと言ってくれた。


 育ててもらう野菜は連作ができるキュウリやナス、トマトといった夏場の需要が高くい野菜とか、育つのが比較的早いシソやレタス。あとは変わり種としてヒマワリを育ててもらうことにする。


 みんな農作業が得意というだけあって、どんな育て方をすればいいのか説明して、種を渡せば各々が早速種まきへと移ってくれた。


 その間、自分のトウモロコシ畑の作業をしてたんだけど、育苗をしてから植える人はおらず、ハグミと同じで畝を作ることなかった。耕したあとなだらかで平たく土を広げた後、種をばら撒き始めたので、みんなをいったん招集する羽目になった。


「ごめん。各々のやり方があるんだろうけどさ、育つ野菜の質を少しでも高くするために一定間隔で植えるって言うのをこの地域の農業ではルールにしたいなって」


「芽が出て来た後に間引くんじゃだめなのか?」


 ナタ君がそんな疑問をぶつけてくる。女神様に不敬だぞって怒ってる人もいるけど、気になってることは同じらしく「言いたいことは分かるのだがな」と言っていたので、理由がぱっとわかって無さそうだ。


「うーんと、まず1つね、間引く前提で種を撒いてると種がもったいないでしょ?」


「そうか?」


「最低2粒の種を1つの植える場所に撒いたとして、それを一定間隔でやれば種袋2袋分で終わるとして、今の一握りで掴んだ分を適当に撒くってやり方だと、ちょっと多すぎるんだよ。だから種袋が10袋とかかかりそうだし、節約は大事なの」


「でも、種やすいぜ?」


「今は魔法で種を増やしてる人が多いからでしょ。今後よその地域でも魔法の使用が禁止になったら、値段が安いからって理由で浪費する癖がついてるといらない出費になるし、今のうちから慣れとかないとね」


「う~ん……?」


「あとはみんな畝を覚えようか、みんなが元居たとこの水捌けよりかはましなんだろうけどさ、ここの土地も水捌けがいいって訳でもないし、根っこが育ちやすくなるから、やって損することじゃないしさ」


「畝ってあのトウモロコシ植えてあるところの盛り土のことかい?」


「そう、あんな感じで10センチくらい盛って撒くだけで、かなり育ちがよくなると思うから試してみて、育ちがよくなると品質上がって、売値も上がるかもしれないし」


「まぁ、見よう見まねでやってみるか」


 今のとこ渋々って感じの態度が多いけど、目に見えて効果が体感できれば自然と種まきのやり方とか、畝とかの基礎部分は定着するだろうし、今後の作業でも気になったら招集をかけて指示する形を取ろうかなって思った。


 何日か様子を見守ってたけど、みんな任された畑以外の畑仕事も手伝いあってて、誰一人自分のところだけ作業すればよいって考えらしい人がいなかったことに驚いた。


 ウエさんの指導のたまものなのか、農作業は助け合いって精神があって、草むしりや水撒きを交代で回して、何日かに1日は休息日が回ってくるようにしてあるらしくて関心する。


 私の畑まで手伝いをしてくれるから、一人で作業してた時には余った時間なんてほとんど出なかったけど、ここ最近は午後には空き時間ができはじめた。


 その空き時間を活用して、みんなが取ってくれた雑草から草木灰を作ったり、地面に埋めて、腐葉土を作れるように仕込んでみたり、実験的ではあるけど、自作の液体肥料づくりにチャレンジをしてみることにした。


 もし、液体肥料で狙った栄養素を補給できる効果ができれば、この栄養素の枯れた土地でもおいしい果物が作れるようになるかもしれない。


 そうなれば、ようやくメギとの約束の果物と世界樹の枝の物々交換も果たせそうだなーなんて目途が立つようになった。


 この前ウエさんたちが持ってきてくれたフルーツを差し入れで渡して、物々交換してくれるかを試してみたんだけど、ここまで待たされたんだし、この土地で取れた果物がいいって我儘……、お願いされたから仕方ないけど引き受けることにする。


 なら果物は受け取らないのかなって思ったけど、メギは普通にもらうつもりだった。


「魔法で育てた果物はいらないんじゃないの?」って聞いたら、それはそれ、これはこれ、ってことで魔法で作った果物は美味しいから、腐るのもったいないし食べるとのこと。魔法で荒稼ぎするニンゲンは嫌いだけど食べ物に罪は無いってことらしい。


 まぁ、別の町の商人からベリー系の木を買えば秋にでも収穫できるかもしれないし、ちょっとした果樹エリアの作り直しをするならベリー系の栽培から始めてみることにしようかな。

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