移住民のあれこれ
「メギ~、ちょっと移住したいって人がいて、話がしたいから出て来てよ~」
世界樹の根本、祭壇のある例の部屋へとおじいさんを連れて来て、メギを呼ぶ。
いつもなら手土産でも持ってないと出てこないメギだけど、珍しく1回の呼びかけで世界樹の上から降りてきた。
「え、移住したい人達って、ホントにこの人……?」
メギが今まで見せたこともないような驚きの表情を浮かべていて、私までびっくり。メギはこの人の一族のことを知ってるのかな……?
「ええ、女神様。もしご迷惑でなければこの地で我々の一族が住まう許可をいただきたいのですが、いかがでしょうか?」
「住んでくれるなら大歓迎。何ももてなせないのが心苦しいくらい」
まさかメギが二つ返事で許可を出すとは思わなかった。
いったいこの人達って──
「待ってください、女神様。せっかく町がなくなったのにこんなにもすぐに移住を受け入れるなんて……」
「あれ、ハグミ知らない? この人の一族はもともとこの土地に会った村の初期住民の一族だよ? ハグミのおじいさん。ホーシ商会の初代会長と一緒に仕事してたこともあるし」
「え?」
「当時、よその世界樹の育ちが悪くて、私たちの土地から奉納用の野菜を買ってもらい続けてたんだけど。それが原因でよその町の財政難が起き始めてたから、見かねて現地で野菜を育てる助っ人として村を出た人達なの」
「懐かしいものですな」
「でも、他の世界樹はもういいの?」
「ええ、この土地の魔法で育てた野菜を大量に安値で買いたたき奉納をたくさんしておりましたからな。地力も満ち溢れ、我々旧式の農家が煙たかったんでしょう。先月/の終わりには土壌に塩をまかれ、引いてた水源を魔法で止められ、収穫直前の野菜がほとんどダメにされました」
老人が顔を俯かせ、怒りに声を震わせて言葉を紡ぐ。
「今月も種を植えて、芽が出るのを待ってみたんですがね、土地に塩分があって、水が撒けないとなるともう手の施しようがないんですよ。そんな妨害を受けて苦しむのであればもう、わざわざ手助けで移住していた義理も使命も関係ないと思い、故郷へと帰りたいと思ったというわけですじゃ」
「今まで尽くしていた人達にそんなひどい仕打ちをするなんて……」
ハグミがおじいさんの話しに言葉を失っている。私も驚いたけど、農家として働いている経験があるから余計に感情移入してしまうんだろう。
「でも……。なんでハグミの畑は荒らされなかったのによその町ではそんな荒らしみたいなことするんだろう……」
「彼らの考えることはわかりませんな。それで、どうでしょう。我々はこちらの土地へと移住、いえ……、戻ってきてもよいですかな?」
「私は戻ってきてほしいな」
メギが言う。
「私もいいと思います。今いる町ではもっとひどいことをされてしまいそうですし」
ハグミも了承した。
「なら、私もオッケーかな。ところで、おじいさんはなんて呼べばいいのかな?」
「おお、そういえばまだ名乗っていませんでしたな。私はハタと申しますですじゃ。よろしくお願いするのぅ」
こうして、私たちの他にもハタさん達の一族が私たちの土地へと住むことになった。ハタさんは一族を迎えにいったん住んでる町へと戻ったけど、その時にお土産を持ってきてくれるって言ってくれたから、楽しみに待つことにする。
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