畑に家畜の餌をぶちまける

 なんで家畜がいないのに家畜の餌を買いに行くのか分かってない様子のハグミに頼んで酪農をしてた人達が移住していった町へと案内してもらう。


 ばれないようにフードをかぶって、変装もばっちり。ハグミはそこまでしなくてもいいんじゃ、って表情をしてたけど。念には念を入れないとってことで。


「いつもは私が買い出しなのに、どうして今回はサクナも来たんです?」


「適当に買った餌だと狙った栄養素を補給できないかもしれないからね。自分の目で見て確実なのを買いたいんだよ」


「そういうものですか……? あ、見えてきましたよ。あそこが家畜の餌を販売しているお店です」


「よーし! 米ぬかとかもみ殻を使った餌ありますように!!」


 店に入って店主と会話を交わす。聞いてみると飼料に使ってる餌は畑からかったらりよその町から買って調合してるらしく、必要なら売ってくれるって言ってくれた。


 米ぬかはともかく、もみ殻が多いと家畜の食道とか胃とかの内臓に傷がつくって忠告してくれるし、また来るなら値引きもするよって言ってくれたし、しばらく贔屓にさせてもらおうかな。


 持ってきた荷台をいっぱいにして帰路に就く。


 結局町のそばまでは来たけど町の中には入らないで帰ることになった。


 というのも、今日の買い出しのことをメギに相談したら、よその世界樹の女神に目をつけられたら後がめんどくさいから、町に入らないで済むなら入らずに帰れって言われたから仕方ない。


 観光したい思いはあるけど、どっちにしても私には今畑仕事ってやるべきこともあるし、まずはやりたいことよりやるべきことを優先しないとね。


 帰り道の途中で鉱山の世界樹の麓の町の行商人と出会って、金属製品の大きな鍋を購入した。考えていたスケジュールでは明日か明後日にでも買いに行こうと思ってたから思わぬ出会いで付いていた。


 農業で使うものを買いに行こうって言ってハグミにはついてきてもらったのに、荷台に乗ってるのは家畜の餌と料理人が使いそうな大きな鍋。ハグミの視線に私がちゃんと農業を出来るのか疑いの感情が乗ってきつつあるような……、って違和感は多分気のせいじゃないだろう。


ーーーーー


 町に帰ってきて、私たちの畑に戻る。


 畑につくなり、落ち葉と薪を集めて火を起こしてハグミに告げた。


「今から炭を作ります!」


「…………」


「え、乗り悪くない? 今から炭を作ります!」


「あの……、畑に種は撒かないんですか もう夏の月になって5日はすぎてますよ?」


「あ、ハグミは育苗部屋見てないんだっけ?」


「いくびょーべや?」


「うん。実はもうトウモロコシの種は撒いてるんだよ。 根っこが立派に育つ肥料を混ぜた土で育ててるから、植えてもしっかり定着すると思うよ!」


「そんな育て方見たことないので想像ができないんですよね……」


「まぁ、種は大丈夫。トウモロコシは大体1週間から10日くらいで芽がでるはずだからもう少しは変化なしかもね」


「なるほど、種は理解しました。でも畑に炭や家畜の餌をどう使うって言うんですか、さすがに説明がないままだと分かりません」


「もみ殻は炭にして混ぜると土の中に住む生き物が生き生き過ごせる環境を作るの。米ぬかはその生き物たちのごはんだね。あとは米ぬかと油を混ぜて作った油かすを土に混ぜて、土の中の栄養素はそれでばっちりって感じにするの」


「土の中の生き物?」


「微生物とかって聞いたことない?」


「微生物……? 妖精たちみたいな精霊とは違うんですよね」


「違う……ね」


「でしたら聞いたことはありません」


「まぁ、今は畑の中に生き物がいるんだーって思ってればいいよ。まだ野生の微生物たちって感じだし」


「野生?」


「あー、そうそう。その微生物を培養するために、家で微生物をペットとして買いたいんだけど大丈夫?」


「いえ……、家にそのようなスペースがないのでちょっと困ります」


「スペースはいらないよ。木箱の土でかえるし、餌は米ぬかとかだし、お世話に手間はほとんどかからないからお願い! 畑のためだと思ってさ!!」


「もう私はサクナがなにをしたいのか分かりません……」


 悪いようにするつもりはないけど、私のやりたいことのほとんどがハグミには理解できない事みたいだ。


 ともあれ、鍋にもみ殻を入れて燻炭っていう炭を作ったし。油と米ぬかを混ぜて酒粕も作れた。後は草木灰とかと合わせて混ぜ込めば土壌を最低限整えることはできるかなってことでひとまずオッケー。


 あとはしばらくトウモロコシの苗が育つのを待つだけになった。

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