第四章 誰が為に 一話

 目を開けると、白いものが見える。白いもの……白い布団、白い天井、白い液体……。


 そのドロッとするものに手を触れて、小春は再び、気を失った。


   *


 十数台の車で戦場に急行した真也たちは、降車して早々、唖然あぜんとさせられた。


 長い髪の女性が、半身を炎であぶられながら、突っ込んできたのだ。

 火炎の鞭を頭につけて振り回す、その威容の凄まじいこと……真也たちは勇んで救援に駆けつけたつもりだったが、途端に度肝を抜かれ、火急、散り散りに退避した。火達磨ひだるまの女性は、真也たちには目も暮れず、川の方へ駆け去っていった。


「酷いもんだな……」

 初っ端の難事にめげず、それから十数人の部隊に分かれて校舎内に突撃した真也は、思わず、そう呟かずにはいられなかった。


 石垣に万歳をして舌を鼻に垂らしている女性、川の字になって投げ出されている顔面の潰れた男たち、上半身が真っ黒になって、女性だか男性だかわからなくなった死体……そのいずれにも火の手が上がっている。


「救護に三人割いて、後は校舎を全部洗うぞ! まだやつら、いるはずだ」


 そうして、校舎に足を踏み入れた真也は、倉庫のひとつで、服を引きちぎられ、半裸で床に投げ出された小春の姿を発見したのだった。

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