第三章 ユエと結え 十三話
「あいつら全員ぶん殴って、とっととそこから出してあげるからね! 絶対!」
倉庫に入れられる前に、シナはそう叫んでいた。
「
「いつでも、抜け出せるように、気を抜かずに、ね」最後に、リナが意味深なことを言い残して、小春は倉庫に囚われた。
*
倉庫は十分な広さがあり、また上部に窓がついていて、余計な圧迫感はなかった。食事は三食、つつがなく運ばれた。排尿と入浴、洗面周りもまた、監視員同伴で認められた。
傷は監視員が二人同伴のもと、ゼンが最低限の手当だけを施した。
「保健室は、緊急の事態以外あかんのやと。融通利かんと滅ぶで、ほんまに」
四六時中監視されるという経験に、小春は始め、僅かな興味と凄まじい気疲れのもと過ごしていたのだったけれど、すぐに慣れた。
ただ、もちろんスマートフォンは没収され、とにかく暇なのがやるせなかった。
一日に数度、シナやユエやセキが訪ねてきて、近況や昔のことを語っていく以外に、暇で暇で、発狂しそうなほどだった。加えて、寒さは尋常ではなかった。特に夜は凍えるような寒さで、掛け布団一枚ではとても耐えがたかった。
ある日、マットの上で横になっていると、ふと、いつかの、誰かと誰かの会話が、脳裏に蘇ってきた。
「なんで辞めちゃったの……?」
「疲れたからさ」
あの男の気持ちが、今ではわかる気がした。
*
目に見えた変化は、右腕に現れた。決して清潔ではない倉庫で、不十分に過ぎる手当しかなされない。
次第に、傷は紫色に変色し始めた。
右腕は一層、動かなくなり、感覚は次第に麻痺してくるようだった。
*
幾日経っただろう。もはや日付の感覚がなくなり、昼と夜の感覚さえ
突如、大きな揺れと派手な音が小春を襲うと、外が慌ただしくなった。
小春は勢いよく、寝そべっていた身体を起こし、耳を澄ませた。
小春は身構えた。襲撃者たちはいったいどこの集団だろう。それによって、小春の運命も決まるのだ。
足音の幾つかが、近づいてくる……。
小春は扉を叩いていた。力の限り叫んだ。「開けて! 閉じ込められてるの!」
最悪のケースというのが、このままずっと閉じ込められておくことだということは明白だった。
近づいてきた足音が、止まった。
「鍵だ」低い、男の声だった。
「撃ち抜いちまえ」
小春は慌てて飛びのいた。弾丸と鉄の扉が、凄まじい音を散らした。
「おい、見ろ! 女だぜ?」
倒れた上体を起こすと、扉の前に立っていたのは、屈強そうな数人の男たちだった。男たちは、小春を見下ろして、笑っていた。
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