第二章 サイレントナイト 十二話

「駄目。飢えて死ぬ」


「ほんと死ね政治家官僚警察金持ちマスゴミども」


「近所のスーパー廃墟になってる」


「メシアン、ほんと先見の明があったわけだな。今じゃ他のYouTuberもVTuberも政府の隠れ蓑としか思えない」


「いや、自分たちが批判の対象にならないようにするためのステマだろう」


「金の奴隷どもめ!」


「ほんと金のために下劣中の下劣に成り下がる人間が多すぎる」


「2000年以上そうだろ! 財産財宝求めて他国侵略し続けここまで来た! っていうわけでしゃーない」


「むしろ金持ちと機関はこの騒動で得してんじゃないのか……? 株価の操作なんかはお得意なもんだろ……」


「もうおれメシアンに付いていく。だから『歯車』入るわ」


「っていうか、テロリストはみんな非国民なんだろ? もう人権なしでいいんじゃない?」


「だいたい、事件起こしてんの、不法移民とホームレスとニートだろ?」


「ここにも極右、頭空っぽのネトウヨさんがいるよ……」


「そもそも、テロやったの、みんな一般人って話じゃないの?」


「ホームレスを追い出せ!」


「非国民を追い出せ!」


「………………………………………………」

「………………………………………………」

「………………………………………………。………………………………………………」


「っていうか誰でもいいからホント、テロリスト捕まえてくれ」


「捕まってるよ」


「え?」


 え?

 小春のチョコを食べる手が思わず止まった。それは、主犯が捕まったという情報に目を留めたからではなかった。


 そこには、動画が添付されていた。


 15分程の、短い動画。

 背景は白い壁。教壇のようなスピーチ台が置かれ、ひとりの黒い男が立っている。

 足先まで届きそうな黒コートに身を包み、顔中が髭に覆われている。


 小春が再生ボタンをクリックすると、動画が静かに流れ出した。

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