第二章 サイレントナイト 十話

 カップのそばをすすりながら、小春は退屈の味を舌先で転がしていた。


 ふと思い立って、外に出ようかと考えた。


 外はもう真っ暗だった。上着を着、マフラーを巻き、靴を引っ掛ける。玄関のドアノブに手をかけた瞬間、銃声が響き渡った。


(なるほど……)

 小春は思った。


(世界は嫌でも私を外に出させたくないらしい)


 それならば仕方ないと観念して、小春はソファーの上に戻った。


 流石に親が音信不通に過ぎて、何か事件か事故に巻き込まれたのではなかろうかと、今さらながら、疑念が沸いた。

 けれどそれなら、少なくとも自宅の固定電話にはなにがしかの連絡があっても良さそうなものだ。小春は一応、両親の携帯に電話を入れておいた。


 佐和からの連絡はなし。

 真也からの連絡多数。

 学年LINEはだいぶ静かになった。


 軽く開いた画面で、

「無理! もう食料が尽きる!」

 こういったコメントに、誰かが店のドアを壊して入ろうとする動画が花を添えていた。

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