第二章 サイレントナイト 九話

 ――捜索願スレット――


「ったく、三日目で、なんでこんなに動きがトロいんだ政府は警察は家出れねえじゃねえか馬鹿野郎!」


「一発目から関係ないコメ送ってんなよ」


「あー、おれ今から家出します。探さないでください。さようなら」


「捜索願って捜索しないでくださいってお願いなの?」


「んな馬鹿な」


「おれ今から船出します、世の果てに。探しても見つかりません。さようなら」


「おれも連れてってくれ。株が死んだ」


「おれも連れてってくれ。会社が死んだ」


「おれも連れてってくれ。香奈恵が死んだ」


「誰だよ」


「愛人」


「暗い日曜日がやってくる……」


「私、ぴちぴちの18歳! 海外へ連れってくれる人を探してます!」


「誰か、こんな時でも自家用ジェットと自家用高級車乗り回して豪遊してる大企業の役員どもと金持ち連中を探し出してくれ。おれが撃ち殺す」


「誰かおれの代わりにロボット導入しやがった会社の役員とコンサル連中探し出してくれ。後生の願いだ。頼む」


「実際あいつら、のうのうと資金面では手を打って海外に逃げようってんだろ? まあ、もとからそういう連中ばっかりだよ、この国は」


「さっきうちのネコが片足無くして帰ってきた」


「さっきうちの旦那が片腕無くして帰ってきた」


「さっきうちの杏奈が半身無くして帰ってきた」


「笑い男いねえかな」


「有刺鉄線で立木に縛り付けられたまま銃弾を撃ち込まれ、笑い続ける笑い男……」


「そっちかよ」


「ヒーローだからな。今で言うダークなやつ。『歯車』にいない? そういうの」


「ああ、そういう捜索願だったの」


 ……………………。……………………。

 ……………………。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る