第二章 サイレントナイト 七話

 ネットをふらふら泳ぎ回っていた小春は、すっかり疲れてしまった。


 目を覆う肉体的な疲れに、出鱈目でたらめに吹聴されているその内容に、卑俗な語り口に、すりり切れすぎた発言と思考に……現代人の浅はかさと愚かさが染み出ていて、反吐へどが出そうになる。


 もっとも小春は、この結果が見えていたので、ネットを使う気はさらさらなかったのだけれど、佐和の情報を何かほんの少しでもと、そう思うと、ネットの中に潜らないわけにはいかなかった(佐和のトーク画面は当然のように沈黙だった)。


 時おり、外で悲鳴と銃声が重奏を奏でていた。

 それすらも、次第に小春は気にも留めなくなっていった。


 一度、ふと思い出して、不自然に開けられていた引き出しを確かめに行った……が、状態を確認したところで、何の進展ももたらさなかった。

 引き出しの中身を、これっぽちも憶えていなかったのだ。


 何を憶えていないのかということすら憶えていないほど、ともかく何も憶えていなかったので、写真だけ撮って親に送った。


 疲れは特に、目が酷いらしい……両目を擦り、少し横になろうとソファーに突っ伏すと、いつの間にか、こくり、こくりと、船をこいでいた。

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