第二章 サイレントナイト 六話


「それはそうと、昨日は不審な呼びかけがネット上で踊り回っていたそうじゃないか」


「テロの勧誘?」


「もう削除済らしいけど」


「経済格差で苦しむ人々だとか、学校化された社会の不正義だとか、暴力的な諸概念によって抑圧された人々だとかその真実を知りたい人だとかなんとかかんとか」


「それで結局、具体的には?」


「さあ。なんでも、中に足を踏み入れた人だけがわかるだとかなんとかかんとか」


「で、それにほいほいと釣られたイナゴたちが銃をドンパチおっぱじめたってわけね」


「テロリストたち、グループ名ってないの?」


「もしかして『歯車』ってやつ?」


「『歯車』はむしろ反対って話じゃない?」


「何、おれらに歯車に戻れとでも言いたいのかね。すんごい名前」


「いや、チャップリンから取ってるんだろう」


「いや芥川だろう。目の中に歯車、どう考えてもそうだろう」


「メシアンが参加表明したってホンマ?」


「国民的VTuberの? 劇こなすVTuberの?」


「国民的ってのは補正が入ってるね」


「でも一番知られてんのはメシアンでしょ、どう考えても」


「名だたるYouTuberが揃って自制を呼びかけてるってのに」


「注目集めたいだけでしょ。それがかえって銀の弾になろうとは誰も思い至らなかったのである」


「批判は免れん。メシアンは干されるであろう」


「おれ好きだったのに……」


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