大吾

「千春! 起きろー!」

「んぉ!」

 耳元での絶叫に、反射的に顔を上げた。慌ててあたりの景色を確認して、ここが教室だと思いだす。今はお昼休みで、どうにも眠くて、チャイムと同時に突っ伏したのだった。

 俺の机の周りには、いつもの三人が集まっていた。

「いや、起きるときの声おもろすぎな」

「綾人の声がきもすぎてつい……」

「千春ちゃん、酷い!」

 いつものように体をくねらせる綾人に笑みがこぼれる。

「んで、どったん?」

 眠りを妨げたのは、特に理由もないのだろうが、とりあえず聞いておく。

「そろそろ君には埋め合わせをしてもらわないとねぇ」

 しかし意外なことに、まともな理由が返ってきた。埋め合わせ、と言えば、病院の日に断った合コンのことだろう。

「そうだな……、じゃあ漢気で俺が勝ったら、全員に焼き肉奢るよ」

「やりー! って、ん? それじゃあいつもと同じじゃねぇか!」

「ばれた?」

「こなくそ!」

 綾人の腕が首に巻き付いてくる。俺がギブと腕を叩き、周りは楽しそうに笑う。

 毎日学校を楽しめているのは、こいつらのおかげだと実感する。口に出したら軽くなるから、絶対に言わないけれど。

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