先生
「経過良好ですね」
対面に座る先生が笑顔で言った。髪の毛には少し白髪が混じっているが、笑うとぐっと幼く見える。
今日は定期検診の日だった。
俺は臓器に病気を持って生まれた。それで余命いくばくというわけではないけれど、体調が常にいいわけでもなく、時には学校を休むこともあった。医師からは移植手術を度々勧められ、拒否を貫いていたが、思うところがあって、ついに手術をした。そういうわけで、定期的に病院に来ては、様々な検査を受けている。
「辛いところとか、違和感とかはないですか?」
「ないですね」
「うん、よかったです。じゃあ、今日は終わりましょう。また次の検診で」
「ありがとうございました」
顎を少し下げて礼をし、椅子から立ち上がる。背後のドアの取っ手に手をかけたところで、
「あ、千春くん」
先生から声がかかる。
「次は、親御さんと一緒にね」
次は、ではなく、次こそは、ではないのだろうか。
「わかりました」
頭だけを先生の方に向け、いつも通りの返事をする。先生は笑って、頷いた。なんだか少し老けて見えた。
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