第十七話 さんま
豪傑から問題…事の顛末を聞いた僕たちはそいつ等がいるシュミレーションルームへと向かっていた。
「しかしなんとも…迷宮の攻略を指揮するリーダーを誰にするかで揉めるって…ガキかよ…」
「あら!昔、羊羹残りの1個誰が食べるかで喧嘩したのは誰だっけ?」
「…」
閑話休題
「そういえば結局のところそいつ等の強さはどれくらいなんだ。ひとえにSランクといっても強さの度合いがあるだろ?」
僕たちははシュミレーションルームへと続く階段を下りながらも話を続けていた。
「そうですね…攻略メンバーの中に災害級冒険者直属の部下がそれぞれ2人…わしが見た中では、もう一人もその二人と同等かそれ以上の強さを持っていると思われます。」
「直属?!これはまた…凄い人材を送ってきたわね…」
隣で話を聞いていた渚がかなり驚いた様子で頷く。
「部下…」
「あー、なーくん痛いとこ突かれたわね。いないものね…部・下(笑)」
「は?」
こ、こいつ…言わせておけば…
「いないんじゃなくてつくんないだけだから。部下くらいつくろうと思えばいつでもつくれるし。」
「(笑)」
「お〜し。いいだろう渚、そっちがその気ならやろうじゃないか上等だよ。」
「キャー!!なーくんが図星つかれて怒った〜」
そうしてそんなことをしている間に目的の部屋へと到着した…のだが…
「ハハハハハハッ!!どうした?さっきから逃げてるばかりじゃないか!?攻撃してこないのかい?!」
「チッ!丁度今からしようと思ってたんだ……よッ!」
その声が聞こえたと同時に中から『ズドーン』というとてつもない音が鳴り響く。
「……」
横を見ると豪傑は黙っていた。
なんというか…
「こわ…」
左から今の僕の気持ちを代弁するかの様に同じく豪傑を見て渚が小さく呟いていた。
「なーくん、なーくん。まずいよ…おじさまの顔。滅多に見ない恐ろしい形相してるって。ただでさえ怖い顔がもっと怖くなってるって!!」
「あぁ…こころなしか筋肉もひと回りデカくなったような気がするな。」
その間も爆音は鳴り続け、その音はより一層激しさを増している。
「なーくん、なーくん!まずいよ!おじさまの顔。人を何人か殺っちゃってる顔し始めてるって!!」
「あぁ…浮かび上がった血管が今にもはち切れそうだ…」
そしてついには目の前の扉が吹き飛ばされ、真っ二つに折れてしまっていた。
「なーくん!なーくん!やばいよ!下向いてなんかプルプルし始めてるって、おじさま!!」
「おーい豪傑。そろそろこれ止めたほうがいいんじゃないか?」
そろそろ豪傑の堪忍袋の緒が切れるなぁ…と思った僕は、横でプルプルしている豪傑を尻目に室内へと足を踏み入れた。
「うわぁ…」
室内はかなり悲惨なことになっていて、いたるところがえぐれたり、へこんだりしていた。
「見ろよ渚、よくここまでやったなと思わね?」
「これ修理代かさみそうね…」
「お!そろそろ終わりそう。」
見るとクリーム色の髪を腰まで伸ばした少女がやや紫色の混ざった黒髪の少年の首元に小刀を向けていた。なので渚もななしの同様小刀を向けている少女の勝ちだろうと思っていた。
「ん?あいつ…影の中になんかいるな…」
「なんかって?」
渚がそう聞き返した瞬間のことだった、隣から大音量の声が聞こえてきたのだ。
「止まれ!!!」
その声の主は豪傑だった。
・・・・
数十分後騒ぎも一段落してお互いに自己紹介をすることとなった僕達だが…うん、何度見ても個性がつよそうなやつしかいないな。
「まずは僕から…僕の名前は幸晴 白羽(さちはる はくば)皆からは王子って呼ばれているからよろしく頼むよ。そして!僕の特技は―――――――――で好きなものが―――――――――で…」
1人目、幸晴 白馬。胡散臭い笑みを貼り付けた男。話を聞く限りではこの男が、2人いるうち1人目の災害級冒険者直属の部下らしい。
「――――――なんだけどそこで僕が…」
「―長い。」
「ぶふぉッ!!」
突然そう言って隣にいた白馬を蹴飛ばした少女。
「あー私は真咲 翡翠(もざき ひすい)災害級冒険者【愚者】様からの命令で今回の作戦に携わることとなった。」
2人目、真咲 翡翠。目付きが鋭いのが特徴。2人目の災害級直属の部下。
「フハッ!ハハハハハハッ!!なんだい?その自己紹介の仕方は、それでかっこいいとでも思ってるのかい?はッ!もしかして高校生にもなって厨二病?そんなはずないよね?え?ないよねえwwww?!」
「黙れ。」
「ぎゃあああッ!!」
嗤っている白馬をすかさず真咲が目潰しする。
「それで、最後の一人…自己紹介が残っているわけだがずっとそこで隠れているつもりなのか?」
「……」
豪傑がそう言うと隅の影がさしている場所から人影が出現する…が
「…クロ」
そう一言だけ言うとその人影は再び影の中へと消えていった。
「よし、では自己紹介もひと通り終わったところでいよいよ作戦会議と…」
豪傑がそこまで言ったところでそれを遮る声があった。
「待ってください。豪傑ギルド長殿、まだ自己紹介の終わっていない方がいるのでは?」
真咲がそう言いながら僕の方を見てきていた。
「おっと、すまないすまない。わしとしたことがうっかりしておったわ。ガーハッハッハ!!では頼めますかな、ななしのさ―」
「…さ?」
「「ッ!!」」
「―んま!!そう!!ななしの さんま!さんまくん自己紹介をしてくれるかな!!」
慌てた様子で自己紹介を促してくる豪傑。
「ど、どうもーななしの さんまです。よろしくお願いしますー。」
(誰がさんまだ だれが!)
(いや!ななしのさん正体バレたくないって言っておったではありませんかッ!?)
(だとしてもさんま?どうしてさんま!)
(昨日食べた夜ご飯がさんまでして…それでさんまが頭の中に浮かんできてしまい…)
「ぷっくくく…さんま…」
渚こいつ…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます