第十五話 大食い
「ななしの!ななしの!!見て見て!」
「ん?何だ。」
現在、僕とセーリアは車に乗り『静岡県の挑戦の迷宮』へと向かっていた。
「富士山!富士山だ!!でかい!」
「あぁ、そうだな。」
きっかけは昨日、僕達の家にやって来た渚が言い放った言葉…
『ランク『S』挑戦の迷宮―その攻略を手伝ってほしい。』
それにほかならない。
もともとは行くつもりはなかったんだが、他の災害級冒険者達が出っ張ってる今、日本で動ける最高戦力は僕だけとのこと。なので依頼も今日中に受けないといけなかったからちょうどいいと思い受けることにした…というのが事の顛末だ。
「あ!ななしの、ななしの!!」
「なぁ…セーリア…今運転中なんだが…」
「すごい!見て見て!!」
「はぁ…聞いてない…」
攻略は面倒くさい…が、楽しそうなセーリアの顔を見ていると仕方がないと、そう思えてきたのだった。
・・・・
「一応着きはしたが集合時間まで時間がある な…」
あれから車に揺られること約2時間、僕達は静岡県『挑戦の迷宮』付近に到着していた。
「あ!それならご飯食べに行こ!」
「まぁ昼時だし丁度いいか。分かった行こう。」
・・・・
「いらっしゃい!」
入ったと同時に店主の軽快な声が聞こえてきた。そして二人でカウンターに座り注文をする。
「おっさん。僕、焼きそばで!」
「私も」
「あいよ。」
焼きそばが出来上がるのを待っている間、僕は何気なく顔をあげ上を見た…するとそこには
「ゲホッ!?」
「ななしの!?どうしたの?」
「う…上。」
そう言い先程見た位置に指を指す。
「上?…あー飾ってあるね、記事や写真。」
そんなことを話している最中、店の店主が話に混ざってきた。
「お!そこの嬢ちゃん、目ざといね。その記事に書いてあるのは今や知らない人はいない、災害級冒険者no nameだよ!」
「は、はぁ。ファンなんですか?」
やたらテンションの高い店主にセーリアは、やや引き気味で言葉を返していた。
この通り昔からセーリアは親しい人以外にはとことん心を開かない。逆に心を許したものには敬語をやめフランクに接する。そのせいか未だに友達と呼べる存在が全くいない。僕にものすごく懐いてくれているのはわかるが…
親心としてはもう少し自分と親しい友達とかを増やしてほしい。
「これno nameのプレミアムステッカーだ。すごい…」
「ワハハハ!そうだろう?」
「めったに手に入らない限定版なのに…」
「……」
「このステッカー…いい値で買います。買わせてください。」
「おっと。嬢ちゃんそれは無理な相談だ。」
「そんな…」
「なぜなら、今丁度こんなイベントをやってるからだ。」
そう言って店長が見せてきたのは、一枚の紙。そこには大きな字で大食いチャレンジと書かれており、時間制限は30分。食べきったときの報酬は料金半額にno nameグッズを1つプレゼント…
「グッズはともかく半額か…」
「どうだ嬢ちゃん。挑戦するか?」
「上等です。やりましょう。」
それからしばらくしてセーリアの前に出されたそれは、およそ20人前はあるかと思われる巨大な焼きそばだった。
「さぁ!食い切れるもんなら食い切ってみやがれ!制限時間は30分…スタート!!」
やけに自信満々な店長の掛け声でそれは始まった。制限時間がある中での20人前にも及ぶ料理を一人で食べ切るというセーリアの孤独な挑戦が…
―25分後
「ご馳走様でした。」
ものの見事にセーリアは食い切っていた。
「うぉぉぉ!すげえ!あの女の子全部食い切りやがったぜ!!」
「まさかあの量を食べ切るなんて!!」
そして辺りに包まれる称賛の声。
「まさかあれを食べ切っちまうとはな、俺の完敗だ。ほら、こいつが嬢ちゃんの欲しがってた成功報酬のステッカーだ。」
「ありがとうございます。」
店長は悔しそうにしながらも爽やかな表情でセーリアにステッカーを渡していた。セーリア自身もステッカーを見て微笑んでいる。
「あ〜美味しかった。美味しかったね、ななしの。」
「あ、あぁそうだな。」
満足そうな笑顔のままこちらに近寄り話しかけてくるセーリア。とっさに返事を返してしまったが僕はふとあることを疑問に思った。
―あれ?僕の分の料理は?―と
◇
春それは花粉の時期。皆さんどうも花見です。今回はセーリアを主に目立たせたセーリア回だったわけですが、どうだったでしょうか。あーでもないこーでもないと修正を重ねていたら、思ったよりもほのぼのとした感じの話になってしまいました(笑)そしてまさかのセーリアは大食いキャラ!
以外だ!!と思った方は、感想、☆評価、レビューをぜひよろしくお願いします。
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