第十一話 炎の中の戦い②
お互いの視線がぶつかる。先に動いたのは…今度はボスの方だった。
格闘技さながらの戦闘能力でこちらに攻撃をしてくる。対して俺はそれをいなし、避ける。
隙を見つければこちらからも叩くのだが、そのたびに能力で拳を止められ避けられる。いくら解除できると言っても解除するまでにそこには一瞬の隙が生まれる。ボスはそれをついて攻撃してきたりもするから非常に厄介だ。
…だが
俺は笑う―そして
「もう慣れたッ!!」
「ハハッ!!!」
再び拳を止められるが、止められてない方の手で殴る。
「右手が止められるなら、左手で殴ればいいてなぁッ!!」
「無茶苦茶言うなぁッ…来崎ッ!!」
そう言いながらすかさず避け、攻撃をしてくるボス。互いに膠着状態が続いていた。
燃え盛る炎の中、ふと静けさがあたりを包む。
「おい…。俺がどんな能力を持ってるか分かったか?」
「さあな。」
「ハハハッ!!分からねえか。なら…ヒントだ…」
―≪パチンッ≫
そんな音が鳴った。するとボスの体は、俺の目からでも視認できるほどの…雷を纏っていた。
「それは…ッ?!」
「さて、特別大チャンスだ。避けてみろ。
―≪刃雷≫―」
ボスが構えを取り、手を斜めに振り上げる。それと同時に薄い雷の刃がこちらに飛来する。
「ッ――!!」
そして雷の刃が…着弾する。しばらくして『バチバチ』という音をたてながら煙が晴れていく。
「生きてるか?」
ボスは煙の方へと問いかける。
「………」
「…死んだか…」
返事はなかった。
「…お前なら俺を……いや、もういい。」
そう言い振り返るボス。
「再開だ。ガキ共を一人残らず殺す!」
一歩、また一歩と背を向け歩き始める。
しかし、
―その歩みは突如止まる―
「おい…」
「…ッ」
「もう行くのか…?」
振り向くとそこには血だらけで立っているナナシノの姿があった。
「……ハッ、ボロボロじゃねえか。血だらけで息も絶え絶え、おまけに…お前のつけてる仮面今にも壊れそうだぞ?」
「……」
「引っ込め、お前にはもう飽きた。それに、これ以上やったらお前…死ぬぞ?」
「死ぬか…死ぬ…ね……、なあ。」
「……?」
「お前の願いは何だ?」
何処か上の空でそう聞いてくるななしの。
「願い…だと?」
「あぁ…願いだ。」
「それはお前らを皆殺しに…」
「―いや違う。お前自身の本当の願いだ。それが何か聞いてんだよ。」
「…皆殺―」
「―それが本当の願いか?いや違うね。それは目的であって願いじゃねえ。テメエ等の…テメエの目的には一貫性がねぇんだよッ!」
「…」
「なぁ…お前は何がしたい…」
「……」
「目的と願いは似ているようで違う。目的とは成し遂げようと目指すこと……すなわち『終点』だ。だが願いは何かへの希望や欲望……それは…『――』」
「………!」
その瞬間炎の勢いが増し体育館が崩れ始める。その戦いは終わりへと近づいていた。
「…俺の願い…か。ハハッ、ハハハハハッ!!それじゃあ俺の願い、お前が叶えてくれるのか?」
―恐らくあいつはもう気づいている俺の願い、俺の期待を…―
「…来いよ。」
少し微笑みながら言葉を返すななしの。それに対しボスは最大限の笑みで返した。
ボスは普通ではありえないスピードでななしのへと接近し、≪パチンッ≫という音と共に拳に雷を纏う。
―≪雷―≫―
だがボスが能力を発動させようとした瞬間、目の前には赤い液体が飛んでいた。それはボスの顔と体へと付着する。
…一瞬のことだ。顔に液体が付着したせいでボスの目は一時的に前が見えなくなっていた。次に見えたときには、既にななしのは体に付着した液体に触れていた。
そしてななしのは能力を発動させる
―≪変化―
途端にボスの体に付着した液体が鋭さを増す。
これは…
「血液か!」
「その通り!!」
《グサッ》…そんな音が聞こえた。その時にはボスの体は、固まり鋭くなった血によって貫かれていた。
「グッ!?」
貫かれた勢いでボスは膝をつく。
だが
「ゲホッ!」
ほぼ同時にななしのも先程のダメージの影響で膝をつく。
もはや互いに疲労困憊。どちらもあと一撃食らったら倒れる状態。それは両者共に感じていることだった。
だからこそ次の一撃で勝負は決まる。
―否―
勝負を決める
そんな凄みが両者にはあった。
そして地面を蹴り両者は相対する…
◇
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