第九話 壊す者
「ひひ!まさか僕の能力をかいくぐって現れるとは…」
そう言いながらゆっくり立ち上がるダブドを見て仁奈は少し驚いていた。この攻撃で多少はダメージを入れられたと思っていたからだ。
「無傷…!」
「無傷?ああ、僕の能力は戦闘向きじゃないからね…多少は戦えるように鍛えてるんだ。無傷なわけではないよ?結構痛いしね…ひひッだが!足りないなぁ!僕をもっと楽しませてよッ!!!!」
ダブドがそう叫んだが同時。一直線に仁奈のもとへ突っ込んできた。
「ひひッ!!!」
それを避けられないと感じた仁奈は自身の能力を発動させる。
「発勁!!」
ダブドの体は再び吹き飛ばされ、壁に激突する。だがその数秒後にやはり何もなかったかのようにゆっくりと立ち上がった。
「………」
この吹き飛ばされる現象、十中八九奴の能力だろう。今の攻撃で能力の候補は絞れてきたが…
「ひひッ!もう少し遊ぼうかッ!!!」
「くっ!!」
・・・・
「ひひッ!どうしたどうしたぁ?さっきのような勢いはどうしたぁ!?」
「うる…さい!!」
やすい挑発に乗りペースを乱されるな私!!冷静になるんだ。相手は私の能力の詳細をまだ掴めてない。
つまりは能力を知るために私に使わせようとしてくるはずだ。そこを逆手に取る!
「はぁァァァ!!」
「ひひッそうこないと!!」
互いに距離が近づいて行く。私は不意打ちで蹴りを繰り出した。だがそれを相手はさも当然かのように避ける。そこに僅かな隙が生まれる。それを私は見逃さなかった。勿論罠だというのは分かっている。
だけど今しかない!!
そして隙だらけのところに手を触れ再び能力を発動させる。
「破掌!!」
触れたとこから弾ける音がする。《破掌》は触れた箇所を文字通り破裂させる技であり、その威力故に人に向けて打つものではなかった。私は息を切らしながら前方を見つめる。
「お願い…これで…」
今この場には襲撃犯が沢山いる。襲撃犯達を倒すことも考えるとこれで決まっててもらわないと勝ち目はほぼ無い。
だが―
「ひひッひひひひひ!!!今のは効いたなぁ!!」
「ッ?!」
「だが、これでわかった。お前の能力…《衝撃》だな?」
「…」
美島仁奈の能力、《衝震》は触れた物に衝撃を与えるという効果を持っている。
…そう触れなければ発動はできない。相手は明らかな戦闘熟練者。触れられるはずがない。故にバレてはならなかった。バレた今、仁奈の勝率は著しく落ちている。
ダブドは明らかな重傷を負っていた。しかしまだ立っている、戦おうとしている。それに対して私はもう能力を使う力も殆ど残っていなかった。
『諦める』
さっきまでの私ならそうしてたかもしれない…
でも
「まだッまだぁぁッ!!!」
「ひひッ!!」
また一歩前へ…今自分にできることを精一杯やるんだ!!!
私はダブドに向かって駆け出した。対してダブドはその場に立ち構えていた。
恐らくこのままではダブドの能力により感知され先を読まれてしまう。私の能力は残りわずか…重傷を負っているダブドでも倒し切るのは不可能だろう。
…能力は使い方だ。使い方によって強さも変わる。要は工夫次第。あの人もそう言っていた…
「ならッ!!!」
私は自身の指を触りそこに衝撃を発生させた。残り少ない力を振り絞り一点に集中させ…放つ!!
「いけぇぇぇぇッ!!!」
「ひひッ!一点に絞ったか。だがそれがどうしたッ!!」
ダブドはものすごいスピードで迫りくる衝撃波を間一髪のところで避ける。
「これでおしまいだなぁッ!!!」
勝ちを確信していた。
「いや…まだ終わりじゃない…」
「なッ!?」
「この衝撃は…弾ける!」
放った衝撃が壁に当たりそれが再び別の衝撃を作り出した。
「これはッ?!」
「衝放破ッ!!!」
激しい音が鳴り響く。その場に立っていたのは…仁奈だった。
「勝った…?」
そして仁奈はその場に膝から崩れ落ちる。
「少しは強くなれたかな…私、あの頃の自分よりも…」
体がもう動かなかった。あちこち痛い。
「これからもっと強くなるんだ。そしていつか…!」
「―それは無理だな―」
「ッ!!」
その声が聞こえたと同時に私は蹴飛ばされていた。
「ゲホッゲホッ!」
私は忘れていたのだ。襲撃者はまだいることに。
「これ以上強くはなれない。お前はここで…」
背筋が凍るような、冷たく、ドスの効いた声が体育館に静かに響き渡る。私にはもう動ける力もない。
私はここで本当に死んじゃうの…?
嫌だ!死にたくない!諦めたくない!
そんな私の考えとは裏腹に体は言うことを聞いてくれない。
「死ね」
「誰か…誰かッ助けて!!」
「―――お前がな」
「ぬッ?!」
突如男の体は吹き飛ばされた。そして眼の前にいたのは…
「元気か?おっさん、また会ったな」
「お前は…?」
驚く私を後目に彼は…あの方は告げる。
「ぶち壊しに来たぜ!!」
「ほざけ…!!」
―そして戦いの火蓋は切られた―
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます