第三話 強く
デーモンスパイダーと対峙する。
かなりでかいな…僕は拳を固め跳んだ。デーモンスパイダーの背中に向かって落下し、着地と同時に殴り爆音が鳴り響いた。
「…硬いな」
煙が晴れていくとデーモンスパイダーの背中にごく少量ではあるがヒビが入っていた。
すかさず僕はそこに追撃をした。だがデーモンスパイダーはかなり怒っているようで二本の前足で僕をふきとばした。
「やるじゃねえか。だがお遊びは終わりだッ」
「ギッギギ!!」
俺は再度デーモンスパイダーに向かって跳びヒビの入っているところを乱打した。やがてひびが大きくなりだし、ついにはその硬い背中を割ることができた。
「トドメだ!!!」
最後に拳に力を込めその場所を思い切り殴る!
背中に大きなキズを負わされたデーモンスパイダーは力尽き膝から崩れ落ちる。僅か数十秒の出来事だった。
「よし、素材取って帰るか。」
そう言いながら素材を剥ぎ取っていく。僕は忘れていた。偶然とはいえ自分が助けた人達はまだこの場にいること…そしてそれがいかに面倒くさい結果を生むかを。
「あ、あの!!」
「?!」
僕は振り返らずに聞き返した。
「なんだ?」
「危ないところを助けていただきありがとうございました!!」
・・・思い出したッ!そういえば女の子が二人いたな。
「あの…」
「!」
「助けていただいたお礼を何かさせてください!」
「…いやい…」
「助けていただいといてなんのお礼もしないというのは私達の気が済みません。お願いします!!」
「あ!!申し遅れました。私は『華宮理亜』(かみやりあ)といい、こっちは…」
「『美島仁奈』(みしまにな)と申します」
おいおい…聞いてもないのに自己紹介始めたよ。
もう僕は面倒くさくなる予感しかしなかったので二人に迷宮の入口までワープできるアイテムを投げて、僕は素材を取らずにダッシュで逃げた。
「あッ!待ってくださ…」
だ、大丈夫。顔は見られていない。
にしても…今日は災難だったな…
・・・・
私は…私達は…諦めていた。
高校生で冒険者をやっている私達は最近Bランクに上がったばかりで、はやる気持ちを抑えきれない。そんな未熟者だ。
そこで油断をしトラップにかかり下の階層まで飛ばされ…最初は大丈夫と思ってた、だけど…
あのものすごくでかい蜘蛛に襲われ私達は生き残るのを諦めた。私達では全く刃が立たなかった。あぁ…死ぬんだ。そう思った…
だけど…
私達の前には一人の少年が立っている。その少年は眼の前にいるモンスターを圧倒していた。そして倒れるモンスター。私達は暫くの間放心状態でいた。
彼が素材をあさりだしても私は動けないでいる。そんなとき
「あ、あの!!」
仁奈がそういった瞬間に我に返り私は彼にお礼を言う。
「危ないところを助けていただきありがとうございました!!」
それからお礼をしようとしたが彼は何かを私達に投げて、そのままどこかへ行ってしまっい、私と仁奈は暫く彼の消えた方向を見つめていたが彼が帰って来ることはなかった。
後で知ったのだが彼が圧倒していたモンスターはデーモンスパイダーというSランクモンスターだったという。彼は強かった。私もそれくらい強くなれば彼とまた会えるのだろうか…
「理亜ちゃん」
「…?」
「あの人に…私達もあの人みたいに、あの人くらい強くなれば、また会えるかな…」
私は少したじろいだ。仁奈が私と全く同じ考えをしていた事に驚いたからだ。だが私が出す答えはすでに決まっている。
だから…
「あぁ、強くなろう…!」
「うん!」
その答えを出した。
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