第二話 no name
冒険者、それは怪物…もといモンスターと呼ばれる者達を倒し稼ぐ、一種の職業だ。
また、能力者達を統制するためにできた冒険者協会と言われる所に登録することでなれるのが冒険者と呼ばれるもの。
そしてそんな冒険者である僕は現在進行形で協会から依頼された仕事をこなしている最中だ。
だけど僕の後ろにはボロボロの女の子2人、前にはモンスター。
僕は思った…なんでこんなめんどくさいことに!
遡ること一時間前…
僕は冒険者協会のギルド長室に呼び出されていた。
勿論理由は依頼。
そして眼の前にいるギルド長こと『悠凪渚』(ゆうなぎなぎさ)は、開口一番僕が大嫌いな言葉を言ってきた。
「さて、ななしのくん指名依頼よ。」
「僕…その言葉嫌いなんだけど。」
「はいはい、文句は依頼を終えたあとで言って。」
「ちなみに拒否権とかは…」
僕が引き攣った笑顔でそう聞くと渚は満面の笑みを浮かべ
「ない♪」
そうして僕は依頼で迷宮と呼ばれるとこに来ていた。迷宮の外側は割と質素なつくりをしていて普通の洞窟と遜色ないレベルだ。
大災害の時、裂け目が現れるとモンスター以外にも様々なものが裂け目から出現するようになったのだが、そのうちの一つがこの迷宮と呼ばれるものだ。
迷宮はランダムに出てきてはその難易度も異なる。今までに出てきた迷宮の中で最も難易度の高いのが静岡県の『挑戦の迷宮』と呼ばれる迷宮で、それは今でも攻略できずに残っているという。
本来迷宮は攻略をしなければ、モンスターが強化された状態で外に溢れかえってくる。
なので政府や協会も早めの攻略を冒険者に推奨しているのだが、モンスターの強さや資源の豊富さの関係から攻略をこまねいている。
そんな事を考えながら依頼を達成するために僕は迷宮の奥へと進んでいくのだった。
・・・・
「今回の依頼であなたには、あるモンスター
を倒してきてほしいのよ。」
「なぜ僕に回ってきたんだ?その依頼。Aランク冒険者数名でやる依頼だろ?滅多なことがない限り僕は呼ばれないはずだ」
「それが、ただのモンスターじゃないのよ。」
「というと?」
「デーモンスパイダーの討伐依頼よ。」
「いや、それならSランク数名で行けば十分討伐できるはずだ!ほらSランクがいる有名なギルドとかに…」
そう、デーモンスパイダーは推定Sランク、それもSランクの中では中位のモンスター。
なんなら上位のSランク冒険者なら十分倒せる相手。
ならば本来僕が行く必要はないはずなのだ。
僕が、全力でそう提案するが…
「生憎だけどほとんどが依頼の関係で居ないわ。それに素材も取ってきてほしいのよ。」
バッサリ切り捨てられた。
「ちなみにもう一度聞くけど、拒否権とかは…」
すると、腰まで伸びている黒髪を揺らしながら渚はアイドル顔負けの綺麗な顔で笑顔をつくり
「ない♪」
その一言を言い放った。
・・・・
「はぁぁぁ、早く帰りたい。デーモンスパイダー全くいないな…」
そんなため息をつきながら僕は下層に来ていた。この『森林の迷宮』は階層が全50層まであり現在45層にいるのだが、目当てのモンスターがなかなか見つからない。
それ以外なら腐るほど出るんだけどな…
山盛りになっているモンスターの山を見て僕はそう思う。
…また違うモンスターか…
向かってくるモンスターに対して右手で構え、殴る。モンスターは胴体の部分に穴が空きその場で力なく倒れた。
「こんなに出ないことなんてあるか?」
そんなことを何回か繰り返していると、ふとそんな疑問が浮かんでくる。単純に運がないだけだろと思う人もいるかもしれないが、僕はこの迷宮に入ってから今までにデーモンスパイダーよりもレアなモンスターを何匹も倒している。
「…なにかおかしい」
そう呟いたと同時に近くから叫び声のような音が聞こえてきた。
「何だ?この音は。」
僕は音の聞こえた方へ向かい、近くまで行くと剣で硬いものを叩いているかのような音が聞こえてきた。それが戦っている音だと気づいたのは数秒後のことだった。
見るとすでに戦いは終わっていて、そこにいるのは戦意を喪失したのか座り込む二人の女と…デーモンスパイダー?!
僕はデーモンスパイダーだと認識した瞬間デーモンスパイダーの下へ飛び出していた…
そして…今に至る。
「貴方は…?」
「だ、誰?!早く逃げて!!」
わかってはいたけど面倒くさッ。こっちは早く討伐して帰りたいんだから静かにしてくれないだろうか…
まあこの子らから見たら僕は弱く見えるのだろう。
…背が低いし。地味に気にしてんだから言わないでほしいんだが…
そんなことを考えながら僕は拳を構える。
・・・・
場面は変わりここはギルドの一室
「もう、体調には気をつけてくださいね。『お祖父様』」
『ああ、すまない心配をかけたね。まさか食中毒になるとはな。』
「賞味期限切れのやつを欲張って食べるからですよ。以後気をつけてくださいね!」
『ああ、分かってるよ。気をつける。
…ところで私が依頼したデーモンスパイダーの討伐、彼は引き受けてくださったかい?』
「ええ、バッチシよ」
『それは良かった。他の強い冒険者はほとんど今出ているからね。それに彼ならば安心だ…』
「そうですね。なんてったって彼は、彼の名は、始まりの災害級冒険者…」
―no name―
ですから♪
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