第123話 遊佐紀リンはドラゴンに警戒する
「次に術士の詳細じゃが、これは悪魔が使う物とは違うな。これはむしろ竜の呪いじゃ」
「竜の? ……えっ!? それってドラゴンっ!?」
「うむ。前に儂がドラゴンの墓所に行ったって話はしたな? あそこは死に瀕したドラゴンが集まり、呪術を用いることでその中でたった一人を活かすための儀式場でもあるのじゃ。いわば、ドラゴンの蟲毒じゃな」
蟲毒というのは、壺の中に虫などを入れて殺しあわせ、強力な呪いの力を持つ虫を生み出す呪法の一種らしい。
つまり、術士さんの正体はドラゴン?
「いや、さすがにそんなドラゴンが街の中にいたらパニックになるよ。シルみたい小さいドラゴンがいるのならともかく」
とシルを巻物から呼び出してみる。
リトルウルフのシルが「キャン」と吠えて頭に載った。
このくらい小さなドラゴンがいるのなら可能だけど、それっているのかな?
領主様はどこからともなく現れたシルに少し驚いているようだけれど、話の本題はそっちじゃない。
じゃあ呼び出すなって話だが。
「ドラゴンの中には人間に姿を変えることができる者もいる」
「つまり、呪いを掛けたのは人間に化けたドラゴンってこと?」
「その可能性もあるって話じゃ」
ナタリアちゃんがわかるのはそれだけらしい。
領主様が「十分だ。感謝する」と言う。
じゃあ、そろそろ治療しようかな?
「まずはメイドさんから治療していいですか?」
「ああ、頼む」
レディーファーストってわけじゃなく、執事よりメイドさんの方が体力が低そうだからだ。
彼女はまだ気絶している。
「気を付けろよ」
「わかりました」
エミリさんと一緒に中に入る。
「待っていてね。直ぐに治すから」
私はそう言って解呪ポーションを取り出して、彼女の口に流そうとするが、綺麗に入らない。
こんなことなら、開発で吸い飲みを作っておいたらよかったな。
「リン。魔法書のように『つかう』と念じたら使えたりせんのか?」
「え? 『つかう』?」
そういえば、そんなコマンドがあったな。
試してみる。
道具欄の解呪ポーションから『つかう』を洗濯
すると、対象の中に
【ミレア】
の名前が。
「この人、ミレアさんで間違いないですか?」
私の問いに領主様が頷いた。
なので「ミレア」に使うを選択。
あ、道具欄から解呪ポーションが一つ減った。
これで使えたのかな?
便利だけれど、空き瓶が増えていない。
ゴミが出ないのはいいけれど、空き瓶も売り物になるそうだしなぁ。
とりあえず、気絶している人に解呪ポーションを使えるのはいい。
次に、執事の治療を――
「――っ!?」
エミリさんが急に顔色を変えて、隣の部屋に向かった。
何事かと私も急いで向かうと、執事が苦しみ出していた。
黒い靄のようなものが出ている。
「リン、急いで解呪薬を――いや、もう手遅れか!」
エミリさんがそう言うと、剣を抜いてその執事の首を斬り落とした。
「エミリさん、一体何を――ってえっ!?」
首を斬り落とされたはずの執事の首から血が一滴も出ない。
それどころか、執事の腕が動き出し、斬られた自分の首を掴んだ。
なに、これ!?
「呪人……こいつはもう呪術による操り人形になったようだ」
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