第121話 遊佐紀リンは派閥争いのいざこざに憤慨する
「お母様は私の結婚に反対しているのです」
とラミュアちゃんは言った。
話が見えてこない。
結婚に反対しているからって、なんで娘を呪ったり誘拐したりするの?
「私を妻にしたいと言っているのは、マロラ子爵家の人なんです。そして、母はクドス子爵家から嫁いできました」
ラミュアちゃんがそれが答えだと言うかのように説明するけれど、どちらも聞いたことがないし、そもそも子爵家がどのくらい偉いかわからない。
本当にどういうこと?
「マロラ子爵は公爵派、クドス子爵は教皇派だからな」
「そりゃ反対もするのじゃ」
「…………? 派閥問題?」
エミリさんとナタリアちゃんはわかりやすく説明しているつもりだろうけれど、私にとっては納得いかない。
「アドルフ子爵領は西の要と言われている上に、中立派じゃからな。どちらも自らの派閥にアドルフ子爵を取り込もうと必死なのじゃろう。是が非でものぉ」
「ナタリアちゃん、結構詳しいね……公爵って一番偉い貴族だっけ? 教皇は……ってあれ?」
今の話で私は一つ不思議なことが気になった。
エミリさんを見る。
するとエミリさんはため息をついて頷いた。
「ああ、王族派は一切関わっていない。というより関われない。中央の覇権を取り戻すために力を裂き過ぎて地方まで手が回らないんだ」
本当にこの国の王様って力がないんだ。
王女であるエミリさんにとっては恥ずかしい話なのかもしれない。
つまり、ラミュアちゃんのお母さんはクドス子爵家のために、教皇派のために娘を殺そうとしたってこと?
宗教は怖いって言うけれど、怖すぎるよ。
教皇が信仰している神様って、アイリス様だよね?
アイリス様に頼んだら、この問題解決しないかな?
いや、教皇が悪いんじゃなくて、教皇を担ぎ上げてその権力のおこぼれを預かろうとしているクドス子爵が悪いのかな?
そもそも、マロラ子爵が悪い人とは限らないし。
考え過ぎて頭が熱くなってきた。
「いかん、リンの頭がオーバーヒートしておる。頭を冷やすんじゃ」
「そこまでじゃないよ。でも、自分の子どもを殺そうとするなんて」
でも、やっぱり派閥争いで子どもの命を狙おうとしているのは考えられない。
ラミュアちゃんのお母さんに話を聞けばわかるのかな?
そう思ったのだが――
「リン、大切なことを言い忘れていた」
とエミリさんは本当に大切なことを言った。
「…………」
ラミュアちゃんが手を合わせる。
そこにあったのはお墓だった。
そのお墓が誰のものなのか?
ラミュアちゃんの言葉が告げた。
「お母様、ただいま帰りました」
馬車の中で聞いていた。
つまり、ラミュアちゃんのお母さんはもう死んでいたのだ。
執事さんや執事さんがやろうとしていることをわかって協力した人たちは、元々ラミュアちゃんのお母さんが嫁いだときに一緒にクドス子爵家からやってきた人たちだった。
事件のあらましを改めて聞いた。。
ラミュアちゃんにマロス子爵家からの婚約話が舞い込んできたのが、一年半前。
その時、婚約に反対していたのがラミュアちゃんのお母さんだった。
そして、ラミュアちゃんのお母さんは呪いを受けた。
ラミュアちゃんの呪いよりも遥かに強い呪いだった。
一体、誰が呪ったのかはわからない。
ただ、ラミュアちゃんのお母さんはマロス子爵による呪いだと遺言を残して死んだ。
しかし、アドルフ子爵はラミュアちゃんとマロス子爵家との婚姻を進めようとした。
それをよく思わない執事はなんとかさいてその婚約を止めようとした。
だが、執事には遠くにいる相手を呪わせるような術を使える術士を雇う伝手がなかった。
だから彼はあろうことかラミュアちゃんを呪った。
呪いを受けた少女相手に、マロス子爵も婚約を進めようとはしないと思って。
だが、私がその呪いを解いてしまった。
だから今度はラミュアちゃんを攫わせることにした。
エミリさんという護衛が近くにいないいまならチャンスだと思ったのだろう。
男たちに攫われたら、それだけで貴族の淑女にとって汚名らしく、結婚の対象にならない。
何故なら、男たちに辱めを受けたと考えられるからだ。
「つまり、執事さんがラミュアちゃんのお母さんの意思を勝手に継いで、勝手にやったことってこと?」
「ああ、そうなるな」
「酷い。私がガツンと言ってやる!」
義憤に満ちた私だったが――
「リン殿! すまないが領主様の急いで来てくれ! 捕らえた執事たちが何者かの呪いを受けていまにも死にそうなのだ!」
さっき御者をしていた領主の遣いさんがこちらに駆け付けるなりそう叫んだ。
え? 今度は執事さんが呪われたの?
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