第114話 遊佐紀リンはブランド豚の名前を知る

 ワギュー退治は不評だったので、場所を変えることになった。

 この階層にいるのは、牛や豚だ。

 豚といってもオークではない。

 いろんな色の豚だ。

 ドングリを食べているからイベリコ豚に違いないって思ったんだけど、イベリコ豚は血統のことでドングリを食べなくてもイベリコ豚はイベリコ豚だし、ドングリばかり食べていてもイベリコ豚でなければイベリコ豚ではないと教えられた。

 言われてみれば、ドングリ以外にも餌がいろいろとあった。

「これ、なんて豚なんだろ? まさか、アグー豚とは言わないよね」

「リン、魔物の種類がここに書いてあるぞ」

 え?

 ナタリアちゃんに言われて壁を見ると壁には写真と一緒に魔物の名前や生態について書かれていた。

 これ、水族館や動物園で見る説明だよね?

 絶対ダンジョンには似つかわしくない奴だ。

 もしかして、十階層にもあったのだろうか? と思いながら、豚の説明を見る。

 ちゃんと品種も書いてあった。

【品種TOKY〇×】

 ……どこかで見たような名前だ。

TOKYOXトーキョーエックスって、ここ東京じゃないのに」

「違います、お嬢様。TOKYトキー〇×《まるばつ》です。トキーとお呼びください」

「もう酷いよ。中国より酷いパチもの文化だよ」

「ははは」

 笑って誤魔化さないでよ。

 ちなみに、この豚はツバスチャンが一匹刈り取った。

 今夜は焼肉パーティらしい。

 

 私たちは三階層に移動する。


 一階だけなので階段を使っての移動だ。

 階段を下りながら、念のためにツバスチャンに質問する。

「三階層は何がいるの? まさか、鶏とか羊じゃないよね?」

「いえいえ、ここから先にいるのはナタリア様がご所望されていた――」

 と降りた先に広がっていたのは、一面の花畑だった。

 花畑、そしてナタリアちゃん、ここから導き出される答えは――

「ハニーキラービーでございます」

 蜜蜂が飛んでいた。

 小犬くらい大きいんだけど。

 あの大きさでどうやって飛んでるのかわからないけれど、巨大な虫って怖い。

 とりあえず、聖銃を構える。

 速い。

 動く先を予想して撃たないと当たらない。

 神経を研ぎ澄ます。

 息を呑んだ。

 そして撃つのをやめた。

 ハニーキラービーは遠くに飛び去ってしまう。

「どうしたのじゃ、リン。撃たんのか?」

「うーん、たぶん撃っても当たらないから」

 的は決して小さくない。動きも単調。

 だが、距離がある。

 距離が当たるということは、銃を撃ってから被弾するまで時間がかかる。

 一秒にも満たない時間だが――

「ええ、お嬢様の仰る通りです。ハニーキラービーは速いですから、命中させたければ少なくとも十メートル以内に近付かないと当たりません」

「死角から撃つのも難しそう。蜂って視野広そうだし。離れている素早い敵に当てる方法とかってないのかなー?」

「逃げられそうな敵を相手にするときは能力に高速弾、誘導弾などがあります。また、開発できる弾丸の中には透明弾など見えないものもありますから、そちらを使うのもいいですね」


 速かったり相手を追いかけたり、見えなかったり。いろいろと手があるんだ。

 と思ったら、さっきのハニーキラービーが仲間を呼んで戻ってきた。


 数は四。


「ちょうどいいですね。では一人一匹倒して見ましょうか」


 ツバスチャンは気軽にそう宣言した。


――――――――――――――――――――――――

 本垢が忙しいため、暫く短めの更新になります。

 ご了承ください。

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