第89話 遊佐紀リンはリッチ退治で上がったレベルを確認する

「おぉ、エミリ! リッチを倒してくれたんだろ! 町にいたゾンビが全部消えたぞ。感謝する」


 プディングさんが声を上げて私たちを迎えてくれた。

 どうやら、町の方も無事らしい。

 私たちが殺したゾンビの死体も消えたそうだ。


「倒したのは私ではなくリンの方だ。感謝するなら彼女に頼む」

「この小さい嬢ちゃんが? 本当か?」

「あ、はい。ゾンビがものすごい大量に出てきたのでエミリさんに守られながらですけれど」

「そうか。いやぁ、人は見かけによらないな。さすがはその年で冒険者登録が許されてEランクになってるだけのことはあるな。これから町の中にゾンビの残党がいないか調査してくるが、嬢ちゃんたちのパーティは休んでいてくれ。つかれただろ?」


 そう言ってプディングさんたちは町の中に入っていく。

 地図では魔物の気配はないけれど、目視で確認したほうがいいだろう。

 年齢についてはもうツッコミ入れないよ?

 日本人は若く見られるくらいの感覚でいよう

 お酒を飲むときに注意されるかもしれないけれど、こっちでは成人していても日本では未成年だから飲むつもりはないし。

 と考えながら帰り道、ナタリアちゃんが声をかけてきた。


「リン、お疲れじゃったな。特別報酬が出るそうじゃから楽しみにしておるといいぞ」

「特別報酬? って何?」

「ああ、まぁ金じゃろうな」


 そうだよね。

 お金はあって困るものじゃない。

 でも、お金って魔物を倒しても手に入る上、私の場合、エミリさんやナタリアちゃん、寄生している人が魔物を倒しても手に入るかそこまで必要ないんだよね。

 そういえば、さっきはナイドメアスの杖ってのを手に入れてたけれど、それ以外にもゾンビのドロップアイテムが大量に入っていた。

 レベルも一気に上がっている。

 ドトールさんの分だけではなく、その時に消えたゾンビの分の経験値も入っているらしい。

 私の現在のレベルは21になっていた。


―――――――――――――――――――――

名前:リン

種族:ヒューム

職業:無し

レベル:21

体力63/63

魔力25/25


攻撃:68

防御:64

魔攻:69

魔防:47

俊敏:52

運:50


装備:無し

特殊能力:特殊聖剣召喚 共通言語 寄生Ⅱ 開発

戦闘能力:手加減 貫通弾 基礎剣術 マルチ弾

生産能力:天の恵みⅠ

称号:コンシェルジュの加護(成長率上昇)

――――――――――――――――――――


 あ、結構強くなってる?

 マルチ弾に基礎剣術って能力が増えている? 

 マルチ弾……マルチ? マルチ商法?

 北海道ファイターズのマルチネス?

 でも、数字が増えているけれど、これってどのくらいの強さなんだろ?

 他の人のステータスが見れたらわかるのに。

 って思ったら、なんかステータスの画面の上にエミリさんとナタリアちゃん、ランドールさん、プディングさんのタブが出現した。

 これってもしかして。

 試しにエミリさんの名前に意識を集中すると――


―――――――――――――――――――――

名前:エミーリア

種族:ヒューム

職業:第一王女/勇者

レベル:52

体力521/521

魔力93/93


攻撃:248

防御:221

魔攻:79

魔防:70

俊敏:135

運:0


装備:王家の剣(偽装済み) 王女の首飾り(偽装済み)

特殊能力:勇者体質

戦闘能力:勇者の守護 剣鬼抜刀 月刀 英雄解放 光の剣 手加減

――――――――――――――――――――

 ……あ、なんか桁が違う。

 最初からステータス見てたらエミリさんが王女ってわかったんだ。

 でも、エミリさんの運が0っていうのは、もしかしなくても勇者体質のせいなんだろうな。

 ナタリアちゃんを見よう。


―――――――――――――――――――――

名前:ナタリア

種族:フェアリー

職業:家出妖精

レベル:13

体力51/51

魔力169/169


攻撃:25

防御:21

魔攻:105

魔防:98

俊敏:72

運:15


装備:妖精の髪飾り

特殊能力:フェアリーリング

戦闘能力:妖精魔法

――――――――――――――――――――

 ナタリアちゃんを見ると少し落ち着いた。

 うん、これが普通なんだよね。

 職業、家出妖精って、えっと……うん、あんまり深く追求しないでおこう。

 

「そういえば、ナタリアちゃん。リッチを倒したときに変わった杖を手に入れたんだけど」

「うむ、杖か。見せてほしい」

「これ」


 私はナイドメアスの杖を渡す。


「ほう、珍しいな。これはダンジョンコアじゃな」

「「ダンジョンコア?」」


 私とエミリさんが同時に尋ねた。


「なんじゃ、リンはともかくエミリも知らんのか」

「いや、ダンジョンコアは知っているぞ? 有名な学説だ。ダンジョンの中には心臓と言えるダンジョンコアがあり、それを壊せばダンジョンも崩壊するという。だが、あくまでそれは説であり、そのような物は存在しないだろう? ダンジョンは魔王によって生み出された存在であり、封印することはできても破壊はできない。それに、ダンジョンコアの形は球状だと言われている。これはどう見て主ちがうだろ?」

「逆じゃ。破壊するのではなく、生み出すために使うのがダンジョンコアなのじゃよ。」


 ダンジョンを生み出す?

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