第82話 遊佐紀リンは再びエミリに頼られたい

 地図を広げる。

 エミリさんはそれの地図を見て何かに気付いた。


「ギルマス。ここは?」


 エミリさんが指さしたのは川だった。

 でも、この川、なんか少しおかしい?

 山の上から流れているはずなのに途中で消えてなくなっている?


「そこから川が地下に流れこんでるんだ。ちょうどこの町の下を通って……ってまさか!?」

「発生源はその川の下かもしれんな。地面を掘って生ごみを埋めていたのならゾンビの力でも掘り上がることができるだろう」

「……町の構造的にこのゴミ捨て場から西門には行きにくい。この場所から這い出してきたとするのなら、西門に行くゾンビが少なかったのも納得できる。どうする? それがわかったのなら地面を岩で塞ぐか?」

「いや、このゾンビの数からして、何らかの上位種が地面の下にいるのは確かだろう。ここで倒しておきたい」


 エミリさんが言うけれど、ゾンビの上位種ってなんだろ?

 スーパーゾンビ?


「誰かがその上位種を倒しに行くってことか?」


 ああ、これはエミリさんが行っちゃう流れだよね?

 うんうん、いいと思うよ。

 エミリさんなら大丈夫だろう。

 私は城壁の上からゾンビ退治してますよ。

 だいぶ慣れてきたし、誰か一人が補助に来てくれたら十分対処できる。


「私とリンが行こう」


 うん、やっぱりそうだよね――ってえっ!?


「私もですかっ!?」

「ああ。上位種ともなると普通の剣ではダメージを与えられないかもしれない。リンの力が必要だ」


 必要!?

 エミリさんに必要って言われた。

 そんなこと言われると照れちゃうよ。

 デスベルクリケットの時もそうだったけれど、やっぱりエミリさんに頼られるのってとってもうれしいよね。


「行きます!」


 私は手を上げて宣言した。


「儂は行かんでいいのか?」


 すると、ナタリアちゃんが不服そうに言う。

 さっきもそうだけど、今回もナタリアちゃんが除け者か。

 あ、でも川の下の洞窟とかなら、ナタリアちゃんの光魔法で周囲を照らした方がいいんじゃないかな?

 一緒に来てもらおうかと思ったら、エミリさんが頷いた。


「ああ、悪いがナタリアはこちらを頼む。何かあったときの対処を考えるとマルチな魔法を使えるお前は地上に残ってもらいたい」

「なるほど、まぁゾンビならまだしも、上位種となると弓矢や剣では対処が難しいからのぉ」


 とナタリアは周囲を見た。

 皮肉というわけではない。

 領分って奴だ。

 ゾンビの相手なら他の冒険者もできる。それが彼らの領分。

 そして、ゾンビの上位種が出てきたとき戦うのがナタリアさんの領分なのだろう。

 その後、編成は進む。

 私たちが担当している南門は、西門を担当していた冒険者たちが分担して見張りをすることになった。

 エミリさんはプディングさんから高濃度の魔物除けのポプリを受け取る。

 

「大事に使ってくれ」

「助かる」


 その魔物除けのポプリを持って、私は川の入り口に進む。

 

「ところで、エミリさん。ゾンビの上位種ってなんなんですか?」

「……あまり決めつけはよくないんだがな。可能性が一番高いのはリッチだろう」

「リッチ?」


 お金持ち?

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