第54話 遊佐紀リンは箱の中身を確認する
「私がお風呂に入っている間に、そんなところに行っていたのか」
エミリさんにネズミ親分と出会った一連の話をすると、とても驚かれた。
「
「へぇ、ネズミ親分が霊獣ってのも凄いけど、ナタリアちゃんってそんなに凄いんだ」
ツバスチャンの言葉に驚くと、ツバスチャンは一度咳払いをして、自分の顎をくいくいと翼の先で示す。
顎が痒いのかな?
「痒いなら搔いてあげようか?」
「違います、お嬢様。私が言いたいのは霊獣よりも凄いものがここにいるということです」
「え? ツバスチャンが?」
「ええ。霊的な力の強い霊獣よりも高位、女神アイリス様に作られた私は神獣――いえ、神鳥ですから」
そう言われるとツバスチャンって凄いね。
神鳥か。
見た目はカワイイペンギンなんだけど、そう聞くと神々しく見えてくる。
「ツバスってすごいのじゃな」
「それほどでもあるのです」
ナタリアちゃんに褒められたツバスチャンが自慢気に顎を撫でる。
そして、ツバスチャンは私たちが持って帰ってきた箱を見た。
ナタリアちゃんが貰った大きな箱と、私が貰った小さな箱だ。
「中にお化けが入っていたらイヤだから一応、家に帰るまで開けずに持ってきたんだけど」
「そんな話は聞いたことはないが。おにぎりを与えたお礼に渡したのだから、そんな意地悪はしないだろう」
わかってないね、エミリさんは。
世の中には、亀を助けたお礼に、お爺さんになってしまう煙が入った箱を渡してくるお姫様だっているんだよ。
童話の話だけど。
「じゃあ、まずは儂の箱から開けるのじゃ」
「待って!」
私はエミリさんの後ろに隠れて、「いいよ」と合図を出す。
ナタリアちゃんが箱を開ける。
お化けは……出てこない?
「これは……赤い布?」
「火ねずみの布ですね。火に対して強い耐性のある服ができます。これだけあれば三人分は作れるでしょうね」
もしかして、竹取物語に出てくる火鼠の革衣のことかな?
凄い、とっても珍しいものじゃないの?
誰だよ、大きい箱はハズレだって言ったの。
じゃあ、小さい箱には何が入ってるのかな?
小さい箱を見る。
お化けは……入ってないよね?
こんな小さい箱に入っているお化けなら倒せると思うし。
私は小さい箱を開けた。
中に入ってたのは――
「……綺麗な石だ……こっちがハズレだったんだ」
これが日本だったら宝石だと思って大喜びだったけれど、この前釣りで宝石箱を釣り上げたばかりだしね。
正直、私は装飾品よりも服にお金をかけたいとおもっているので、ナタリアちゃんの赤い布方がいいように思える。
全身赤のドレスとかオシャレだよね?
「な、なぁ、エミリよ。あの石なんじゃが――」
「ああ、皆が名前を知れど見たものはほとんどいないと言われる――」
「ん? どうしたの?」
エミリさんとナタリアちゃんが私の綺麗な石を見て何か言ってる。
綺麗な石が欲しいのかな?
二人とも女の子だもんね。
私には宝石箱の宝石があるし、ナタリアちゃんは衣を手に入れたから、この石はエミリさんにあげよう。
「エミリさん、石に興味があるのならいりますか?」
「リン、滅多なことを言うな。そう簡単に受け取れるものではない」
「え?」
「ツバスチャン。君ならわかるのではないか? この鉱石が何なのか?」
エミリさんがツバスチャンを見る。
これ、宝石じゃなくて鉱石なんだ。
でも、そんなに凄い鉱石なのかな?
「ええ、不純物は少し混ざっていますが、エミリ様の予想通りオリハルコンです」
え、オリハルコン?
……なにそれ?
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